第10回 宮城県のバードウォッチングおすすめスポット

第10回 宮城県のバードウォッチングおすすめスポット

2019年1月31日 , Vanguard World

宮城県伊豆沼周辺
バードウォッチングを始めた方には、自宅の近所での身近な鳥との出会いを楽しむことも大切にして欲しいのですが、やはり遠出して普段は見かけない鳥たちに出会う機会もぜひ設けてもらいたいことの一つ。そこで、今回は日本最大級のガンやハクチョウの越冬地である宮城県伊豆沼を紹介します。
宮城県伊豆沼・内沼サンクチュアリセンターから見た伊豆沼
 宮城県伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター
伊豆沼は1985年にラムサール条約(水鳥を中心とした湿地生態系の保全を目的とした国際的な条約)に登録された場所で、世界的にも重要な水鳥生息地として認識されています。
 
伊豆沼での野鳥の観察ポイントは、宮城県大崎市と登米市にまたがる湖沼や湿地、水田地帯です。一番便利なのは、JR東日本・東北新幹線のくりこま高原駅からレンタカーを借りて回ることですが、冬季の運転が苦手という方には、JR東北本線・新田駅から徒歩で伊豆沼の東岸(登米市伊豆沼サンクチュアリセンター 淡水魚館)を中心に回ることをお勧めします。
実はガンは伊豆沼の湖面にいるのは主に夜。沼をねぐらとして利用していますので、日中は周辺の田んぼで餌を採っています。一番数が多くて見やすいのはマガンです。ユーラシア大陸に広く分布しており、嘴がオレンジ色で根元から額が白いのが特徴です。やや甲高い声で「キャウア、キャウア」などと鳴き、遠方からでもよく聞こえます。
水田に降りるマガンの群れ
群れの中の一羽ずつの個体をよく見ると、額の白が小さい個体がいます。これはマガンの幼鳥です。
お腹に黒い斑点がなく、中央の額の白が小さいのが幼鳥(↓)
 
伊豆沼周辺で見られるガンの仲間で一番数の多いマガンは約10万羽(日本で越冬する8割)が飛来していると言われており、その数の多さには圧倒されます。特に早朝日の出直後くらいに見られる伊豆沼の水面からの飛び立ちは壮観ですので、ぜひ一度はご覧いただきたい光景です。ただし、とても日の出前は冷えて寒いので、防寒をしっかりしてください。西側が飛び立ちの観察には良いことが多いのですが、鳥の行動を妨げてしまうこともあるので、宮城県伊豆沼・内沼サンクチュアリセンターに観察に適した場所を問い合わせるのが良いでしょう。
ねぐらからの飛び立ち。
次に多いガンは、ヒシクイです。マガン同様、ユーラシア大陸に広く分布しますが、日本にやってくるヒシクイは、極東地域に主に生息するオオヒシクイという亜種が多く、伊豆沼でもその多くが亜種オオヒシクイです。マガンよりも体が大きく、顔が濃い褐色で、嘴が黒く黄色模様があります。ややかすれたような声で「ガァハハハ」あるいは「グアハハ」などと鳴きます。
オオヒシクイ
伊豆沼にいる間にマスターしたいのが、飛んでいるガンの見分けです。飛んでいるときにお腹に斑点があり、嘴がオレンジ色に見えるのがマガンです。
マガンの飛翔
オオヒシクイは飛んでいるときにも嘴の黄色い模様が見えますが、マガンとは異なり、お腹に斑点が見えないことや、頭が黒っぽく見えることで見分けることができます。
オオヒシクイの飛翔
近年、国際的な協力によって、ほとんど日本からは姿を消した2種類のガンが戻ってきています。顔が黒くて頬が白いのがシジュウカラガンです。
シジュウカラガン
もう一つは全身が白いハクガンです。実は翼の一部に黒い羽があるのですが、地面にいるときはほとんど目立たないので、ほぼ全身白く見え、とても美しい鳥です。運が良ければ見つけられるかもしれませんので、根気よくマガンの群れを確認していきましょう。
ハクガン
全身が白い鳥と言えば、やはりハクチョウでしょう。日本に冬に飛来するハクチョウは、実は2種類いて、嘴の模様が違います。伊豆沼では黄色い部分の大きいオオハクチョウが多く見られます。
オオハクチョウ
オオハクチョウよりも少し小さく、嘴の黄色い部分が少ないのがコハクチョウです。ただし、ハクチョウの嘴の黄色い部分の模様は個体差がありますので、識別には注意が必要です。
コハクチョウ
ガンやハクチョウの数に圧倒される伊豆沼ですが、関東では観察の機会が少ないカモ類も数多くいますので、水面に注意しましょう。体が大きくて潜水をよくするカワアイサも見逃さないようにしましょう。
カワアイサ(雄)
もう一つは、白と黒のカモ、ミコアイサです。彼らはやや警戒心が強いので、望遠鏡があると良いでしょう。
ミコアイサ(雄)
水鳥が集まる環境では、猛禽類もやってきます。伊豆沼の周辺でよく見られるのは、ノスリです。電柱に止まっている姿を見つけるのが観察もしやすくて良いでしょう。
ノスリ
伊豆沼で会いたい大型の猛禽類は、オジロワシです。伊豆沼では毎年冬に渡ってきています。行動権が広いのですが、風を使って移動するので、カモが急に上空を気にしたり、飛び立ったりしたときには、空を見てみましょう。大きな翼に運が良ければ会えるでしょう。
オジロワシ
周辺の雑木林にも気を配りましょう。アカゲラも見られます。
アカゲラ
カモや猛禽の出現がひと段落したら、草原の鳥を探してみるのも楽しいです。パチパチという音が聞こえたら、それはオオジュリンかもしれません。草の皮をめくって、中にいる虫を食べている音です。
オオジュリン
口笛のような「フィッホ」と声が聞こえたら、ベニマシコがそばにいるはずです。
 ベニマシコ(雄)
夕方になり宿に入っても良いのですが、もしレンタカーで伊豆沼を楽しんでいたら、少し足を伸ばして蕪栗沼(かぶくりぬま)へ行ってみましょう。伊豆沼から南へ10kmほどの場所で、車で20分ほどです。ここもガン類のねぐらになっている場所で、日の入りの時刻になると、ガンが続々とやってきます。ハクチョウとオオヒシクイは日中も滞在しているので、夕方頃からこの場で待機していても、楽しめます。
蕪栗沼の様子
 
この沼でのねぐら入りは、で写真ではお伝えできないほどの鳥の数と声です。18の写真の空の静寂さが嘘のようになります。ぜひ現地に行って、その圧巻をご自身で体感してほしい光景です。
 
 神戸宇考 野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール1973年石川県生まれ
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

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