海水を飲むアオバトの不思議な生態を観察しよう!

海水を飲むアオバトの不思議な生態を観察しよう!

 

山の鳥が海に来る!

 バードウォッチングを始めて間もない初心者にとって、木々の葉に隠れたり、枝先を動き回る山あいの野鳥を観察するのは難しいことです。しかし、神奈川県大磯町の照ヶ崎海岸では、山間部でも観察の難しいアオバトという鳥が海水を飲みに来るため、その姿を簡単に観察できます。

アオバト

 

 

アクセス

JR東海道線大磯駅下車 徒歩約15

 

 

狙い目は日の出から午前10時頃まで

 

 アオバトが海岸にやってくるのは、5月初旬から10月頃までです。ほぼ毎日飛来はしていますが、天候が悪い日などは数が少なくなります。そのため、悪天候が続いた後は晴れた日には大きな群れが飛来し、圧巻となります。

 一番数が多い時間帯は朝6:00-8:00頃です。その後数は徐々に減っていくのですが、午前10時頃までは飛来が続くので、9時くらいまでに現地に着くことができれば、アオバトの姿を観察することができるでしょう。

アオバト
群れで飛び回るアオバト

 

 

岩場には近づかず、着地したら観察しよう

 

 アオバトは飛ぶスピードが速いので、バードウォッチングの初心者が双眼鏡で追うことは難しいかもしれません。その場合は、実は防波堤の上で観察するのが一番得策です。防波堤の上は見晴らしが良く、アオバトの飛んでくる方向がよくわかるからです。遠くのアオバトの群れは海岸を目指して飛んでくるので、近づいてくる群れを先に双眼鏡で捉えておけば、岩場の周辺を飛ぶ頃にはきっと体の美しい緑色もしっかり見えています。

アオバト

 「近くで見たい!」という思いから、岩場に近づいて観察する人やカメラマンが非常に多いのですが、岩場は濡れていて滑りやすく非常に危険ですし、波打ち際に人がいると警戒をして着地をせずに飛び去ることが増えます。

アオバト
波打ち際にいると、アオバトが岩場に着地する機会も滞在時間も減ります

 岩場にいる様子の観察に一番いいのは、波打ち際から離れ、防波堤に寄りかかりながら観察することです。そうすると、アオバトの警戒心が弱まって波打ち際の岩場へ飛来することが増え、双眼鏡でもゆっくり観察できる距離で姿を楽しむことができます。

アオバト

アオバト
みんなでマナーを守れば、アオバトを全員がじっくり観察できます

 

 

アオバト以外に訪れる鳥

 

 照ヶ崎海岸はアオバト以外にも様々な鳥がやってきます。9月はちょうど渡りの時期でもあるので、前回の谷津干潟の回でも紹介したキアシシギが岩場にいることがあります。

キアシシギ

キアシシギ
キアシシギ

  見分けの難しいカモメの仲間ですが、この時期の関東地方ではウミネコであることがほとんどです。嘴の先端の模様が特徴なので観察して確認しましょう。

ウミネコ
ウミネコ

 上空にも注意しましょう。大型の猛禽類、ミサゴも餌の魚を求めてやってきます。運が良ければ、岩場近くに飛び込んで、魚を捕まえるシーンが見られるかもしれません。

ミサゴ
ミサゴ

 沖合で群れている水面近くを流れるように飛ぶ鳥がいたら、それはオオミズナギドリの可能性が高いです。普段は船に乗らないと観察しにくい鳥ですが、魚の群れが海岸近くに来ているときには、オオミズナギドリが陸に寄ってくることがありますので、チャンスを逃さないようにしましょう。



 この海岸では一般的な種類だけではなく、日本では大変珍しいキョクアジサシも記録があります。初心者には発見も見分けも難しい鳥ではありますが、ベテランの方々もたくさんいる探鳥地ですので、タイミングを見計らっていろいろ質問をしてみても良いでしょう。

キョクアジサシ
キョクアジサシ(海外撮影個体)

 

 

まずは安全を最優先に

 

 海岸での観察では、山でのバードウォッチングとは違う安全配慮が必要です。9月でも暑さや日差しの強い日がありますので、水分補給と紫外線対策をしっかりとしましょう。また、地震が起きたら、津波が来るかもしれませんので、すぐに高台へ避難しましょう。

 暑さ対策でサンダルなど素足に近いもの歩きたくなるのはわかりますが、海岸はいろいろな漂着物があり、棘状の尖ったものも多いので、必ず運動靴を履きましょう。

 また、干満による海面の上下もありますので、念のため満潮時刻を調べてから立ち入りましょう。天候が良くても、沖合に台風があると波は高くなります。十分注意しましょう。波しぶきの入ったアオバトの写真は躍動感があって人気ではありますが、常に安全に細心の注意を払いながら観察をしましょう

アオバト
 

大磯のアオバトについては、以下の情報をお出かけ前にご覧になることをお勧めします。


大磯町の観光情報サイト isotabi.com -イソタビドッコム-
http://www.town.oiso.kanagawa.jp/isotabi/look/shizen/aobato.html

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 神戸宇考 野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール1973年石川県生まれ
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

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2件のコメント

神戸宇孝
神戸宇孝

2019年11月24日

RURIBITAKI様、

コメントありがとうございます。大磯では、鳴き声はほとんど聞かれませんが、緑色の羽毛ははっきりと見えます。適切な距離感というのは、本当に難しいのですが、アオバトに限らず、首を少し伸ばしてじっとする様子や、やや体を細身にするなどの「警戒している様子」などを、多くの人が双眼鏡や望遠鏡を通して判断できるようになるといいと考えています。そのような内容についても、今後触れていきたいと思います。

ruribitaki
ruribitaki

2019年10月11日

今回もためになる記事でとても参考になります。大磯のアオバトは有名ですが、こんなに大勢でやってくるのですね。あのちょっと不思議な鳴き声で鳴いたりもするのでしょうか。また、キョクアジサシを発見出来たら、バードウォッチャー冥利に尽きるのではないでしょうか。
そして、いつも野鳥観察する際のマナーに具体的に言及してくださって本当にありがたいです。適切な距離感を守って、お互いに不用意に警戒させたりしないよう、気をつけていきたいですね。


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