神戸宇孝さんの野鳥観察に行こう! 第3回 9月は「カルガモ」

神戸宇孝さんの野鳥観察に行こう! 第3回 9月は「カルガモ」

第3回 鳥の特徴を確認するおもしろさをカルガモで味わおう!


  • “茶色でずんぐりむっくり”が特徴

 これまで素敵なブルーが特徴のカワセミや純白の衣を身にまとったスマートなコサギなどに注目してきましたが、今回は「茶色でずんぐりむっくり」のカルガモを紹介します。

  カルガモを見たことがなくても名前は知っているという方も多いでしょう。カルガモを一躍有名にしたのは、1980年代の東京・大手町での“事件”でした。

 

 

 ビルの脇にある人工池でカルガモが繁殖し、かわいい雛たちを育てる微笑ましい光景が新聞誌面をにぎわせました。皇居のお堀に移動するときには警察が出動して車を止めて横断させるなど、まさにVIP待遇。これを機にカルガモは日本中で知られる存在になりました。

 

 大きさは58-63cm程度。アヒルより少し小さいくらいのカモの仲間です。ほぼ全身が茶色で丸みを帯びた体型をしています。「特徴は“茶色でずんぐりむっくり”」と覚えておくといいでしょう。

 カワセミやコサギと同じ水辺にすむ野鳥で、川のほか、公園の池、水路、干潟などによくいます。コサギと同様、「水辺に行けばカルガモがいる」くらいに思っていても大丈夫です。

 

 探すポイントは、水面や岸近くです。特に河原などでは地味な羽の模様が風景に溶け込んで最初のうちは見つけにくいと感じるかもしれませんが、写真の矢印の場所などを参考に探してみてください。

 

 

 

 

 

 

 カルガモは、全身がほぼ茶色なので地味な印象ですが、目立つ特徴は嘴の先端の黄色です。図鑑にもよく記述されている識別ポイントで、この黄色は遠くからでも見ることができます。また、陸の上にいるときは足の色にも注目してください。あざやかなオレンジ色をしています。

 

 私がまだ鳥を見始めて間もない頃のこと、この2点のカルガモの特徴を野外観察でもきちんと確認することができました。そのときの喜びの記憶は今でも鮮明に残っています。お小遣いを一生懸命にためて双眼鏡を初めて自分で買った子供の頃の思い出の一つです。

 

 1羽見つけたら、双眼鏡を左右に動かして周囲をよく見てみましょう。季節にもよりますが、カルガモは群れを作る鳥なので1羽いればその近くにもだいたい仲間がいます。

 

冬は大きな群れになり、100羽以上が水面にいるということもあります。

 

 カルガモは日本で一年中見られるカモです。冬はたくさんの種類が日本にやってきているので見分けるのがたいへんですが、夏の間は平地にいるカモの大半がカルガモですので、写真のように緑色の草の中に潜んでいても、カルガモと思ってまず問題ありません。

 

 

 全体的に地味な配色なので、つまらない種類だと思われがちなのですが、実はとても美しい羽の持ち主です。その羽は普段は見えないのですが、翼を広げたり、羽の手入れをしたりしているときに見えることがあります。一部のカモのグループに見られる「翼鏡(よくきょう)」と呼ばれる羽で、金属的な光沢を持ち、光の当たり方によって青や紫、緑に変化します。

 

着物の内錦のように隠れたおしゃれをしているところが私のお気に入りです。

 

 春から夏には、写真11のようにかわいい雛連れの姿も見られますので、ぜひ身近な自然でカルガモたちを見つめてください。大自然ばかりではなく、傍にある小さな緑にも野鳥たちの生活があることをカルガモが教えてくれるでしょう。

 

  • カルガモ観察に適した機種

カルガモは公園の池などにも生息していて観察しやすい鳥です。8倍程度の双眼鏡で十分ですが、嘴の先端部分の黄色や翼鏡などをじっくり見たい場合には望遠鏡を使うのもおすすめです。

 

撮影地:神奈川県海老名市目久尻川、神奈川県茅ヶ崎市小出川、東京都三鷹市井の頭公園

 

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 神戸宇考 野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール1973年石川県生まれ
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

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