神戸宇孝さんの野鳥観察に行こう! 第4回 10月は「カワウ」

神戸宇孝さんの野鳥観察に行こう! 第4回 10月は「カワウ」

第4回 鳥の個性が見えてくる!カワウの色合いの違いに注目しよう!


 力強い翼を広げて飛ぶカワウのイラスト。この鳥は深い青と茶色の羽、鮮やかな黄色の喉の斑点が特徴で、優雅な飛行姿勢をしています。自然の生物多様性と野鳥観察の美しさを表現する画像。

“川にいる鵜”、カワウ

 今回紹介するカワウは、水辺にすむ長い首が特徴の黒い鳥です。体型の印象は、黒いボウリングのピンのようです。

河川の流れの中で小石の上に立つカワウの写真。黒光りする羽毛、鮮やかなオレンジ色のくちばしと目の周りの肌が特徴的で、自然の環境での野鳥の生態を捉えた一枚。

 全長82cmで、今まで紹介した鳥の中では最大です。体が黒いためか、あまり人気はないのですが、カルガモの翼鏡(よくきょう)のような金属光沢が全体にあり、光の角度によっていろいろな色に変化してとてもきれいです。

川の中の岩にとまって羽を休めるカワウのクローズアップ写真。特徴的な黒と緑の光沢のある羽、明るい黄色のくちばしと顔の周りの肌が目を引き、自然観察と野生生物の研究に適した内容。

 また、目が本当に素敵なラムネ色で、これをじっくり観察できた日はとても充実した気持ちになります。

川の背景に映えるカワウの顔のクローズアップ写真。鮮やかなオレンジと黄色のくちばしと、鋭い緑色の目が特徴的で、水辺の野鳥のディテールとその環境への適応を捉えた一枚。

 川や池、ダム湖などが主な生息地ですが、干潟など海辺にも普通に見られます。流れの速い場所よりも、ちょっとよどみのあるような水辺が好みのようです。一番大事な環境要因は餌となる魚が生息していることです。また、カワウは飛び立つときに助走が必要なので、ある程度幅のある川や広い水面のある環境を探してみましょう。

どこかにカワウがいます。カーソルを合わせると答えが表示されます。

 

どこかにカワウがいます。カーソルを合わせると答えが表示されます。

 

飛んでいるときは、首を伸ばしています。コサギは首を曲げて飛びますので、違いを確認してみてください。双眼鏡で追うのが難しい場合は、まず目で追ってみるといいでしょう。

 カワウは群れで行動することがよくあります。黒くて大きな鳥ですので、たくさんいると非常に目立ちます。

都市部の河川で堰にとまり一列に並んだカワウの群れの写真。背景には建設機械と作業中の人々が見え、野生生物と人間活動が共存する環境が捉えられています。

子育てのときは、「コロニー」とよばれる写真のような集団繁殖地を形成するので、巣作りをしていればすぐにわかります。

都会の公園にある池の中の人工島でくつろぐカワウのコロニーの写真。背景には裸木と建物が見え、自然保護と都市環境の融合を示すシーン。


 カワウは水の中に潜って魚を追いかけてとらえます。

水面に浮かぶカワウの写真。黄色いくちばしと精悍な表情が特徴的で、鳥が自然環境で休息を取る様子を捉えています。

橋の上などにいるときに、運がよければ、水中で魚を追いかける姿を観察できます。

水面に潜る瞬間を捉えたカワウの写真。水しぶきが飛び散るダイナミックなシーンで、野鳥の行動と自然環境の活動的な瞬間を表現。

 魚を捕まえると水面に上がってから呑み込みます。私は嘴よりも長い大きなウナギをくわえて上がってきた姿を見たこともあります。

魚をくわえたカワウが水面に浮かぶ姿を捉えた写真。鳥の狩猟技術と水辺の生態系の一部を描いています。

 ウの仲間は潜水に適する体に進化しました。体を2kg程度に重くし(全長60cmくらいのコサギは300〜500gしかありません)、推進力を効率よく作り出すため、足は体の後方に配置しています(そのため地上で立つと直立型になるのです)。

水面に浮かぶカワウが大きなウナギを捕獲している瞬間を捉えた写真。野生生物の捕食行動と水辺の生態系の相互作用を示す迫力あるシーン。

 鳥の羽毛は体温を維持するために非常に撥水力があるのが普通なのですが、ウの仲間は浮力を減らして水の中でスムーズに動くために、羽毛の撥水力を極力落としています。水面で餌をとるカモと比べると、体が深く水の中に沈んでいるのがわかりますか?。

カワウとカモが共に泳ぐ姿を捉えた水辺の写真。野鳥の種間相互作用と生態系内での共存の瞬間を描いています。

水面を泳ぐカワウのクローズアップ写真。黄色と黒のコントラストが鮮やかなくちばしと、濡れた羽毛の詳細がはっきりと捉えられています。

水面を泳ぐカワウの写真。くちばしに小さな魚をくわえた状態で、湿光る羽毛と警戒しながら水を見つめる姿勢が特徴的です。

 しかし、この羽毛は水の中に長い時間入っていると水がしみ込んで重くなり、飛べなくなってしまうのです。そのため、カワウは岸に上がって羽を乾かす必要があり、写真のように石や木の上で翼を広げている姿も結構な頻度で見られます。

川の中の岩に立ち、翼を広げて日光浴するカワウの写真。光を反射する水面と鳥の羽毛のディテールが鮮明に捉えられています。

 普通、水かきのある鳥は細い枝に止まるのが苦手なのですが、このカワウは珍しく電線のような細いものにも止まることができます。

電線にとまるカワウのシルエットの写真。灰色の空を背景に、鳥の独特な姿勢とプロフィールが際立っています。

カワウは集団で暮らすので、群れでねぐらと餌場を行き来しています。夕方、川などに沿って一列に飛ぶ姿を見ることもできます。夕陽をバックに飛ぶ姿はとても風情があります。

夕焼けの空を飛ぶ鳥の群れのシルエットの写真。ピンクとオレンジ色に染まる雲が背景にあり、自由と野生の美しさを感じさせる一枚です。

夕暮れ時に飛ぶ鳥の群れと大きな太陽のシルエットの写真。オレンジ色の空と山の輪郭が背景に描かれた壮大な夕景。

 群れでいた場合、一羽ずつをよく観察してみましょう。よく見ると、微妙に色が違います。

水面を泳ぐ若いカワウの写真。光の反射によって羽毛の詳細が強調され、鳥の注意深い表情が捉えられています。

 やや茶色っぽいものや、足の付け根に白い斑があるもの、頭の部分に白い毛が生えているものなど、いろいろな個体が見つかると思います。これは年齢、繁殖羽、非繁殖羽の違いです。

水面に浮かぶカワウが魚をくわえている写真。水滴が飛び散る瞬間と野鳥の捕食技術が鮮明に捉えられています。

 茶色の個体をずっと観察していると、餌を採るのがあまり上手ではなかったり、水面で木の枝などで遊んだりしているものがよく見られます。これらは、まだ若い個体です。

水面を泳ぐカワウが小魚をくわえた状態の写真。鳥の捕食行動をリアルタイムで捉えた、自然環境の生態学的瞬間を示しています。

 頭に白い毛や足の付け根に白い斑のあるものは、繁殖行動に入った大人の個体(成鳥)です。

飛行中のカワウのシルエットが暗い空に映える写真。鳥のダイナミックな翼の広がりと飛ぶ姿勢が強調されています。

飛翔するカワウの写真で、頭部の白い羽毛と足の付け根の白い斑点が矢印で示されています。これらの特徴は繁殖期に特有のもので、成鳥の識別ポイントとなります。

カワウのクローズアップ写真で、鮮やかな黄色の喉と集中した表情が特徴的です。水面の上で警戒しながら周囲を観察している様子が捉えられています。

 それのない個体は非繁殖個体です。

川の流れの中で小石の上に立つカワウの写真。黒光りする羽毛、明るい黄色のくちばしと顔の周りの肌が特徴的で、自然の環境での野鳥の生態を捉えた一枚。

 自分の目の前にいる鳥が、若いのか、大人なのか。大人ならば、繁殖中なのか、独り者なのか。そんなことが羽の色合いでわかるのです。鳥の色の状況で、鳥の生活まで見えてくるのです。私が鳥を見始めた30年ほど前は、まだカワウの数は少なくて、実はこのような観察は難しいことでした。今では数も増え、様々な水辺環境で観察できます。カワウのたくましく生きる姿をぜひじっくり見てみてください。

撮影地:神奈川県海老名市目久尻川、神奈川県藤沢市引地川、東京都稲城市多摩川、東京都大田区東京港野鳥公園、東京都台東区不忍池、栃木県栃木市渡良瀬遊水地、千葉県習志野市谷津干潟

今回は、ちょっとおまけ雑学を。ウというと長良川の鵜飼いを思い浮かべますが、鵜飼いに使っているのはウミウ(海鵜)で、別の種類です。ウミウを使う理由は、カワウに比べて体が大きく、深く潜ることができて丈夫であるからとされています。また、ウミウは荒磯の波間でも巧みに泳ぐことができるため、長良川のような速い流れにはよどみでよく餌を採るカワウよりも適しているとも言われています。

 

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 神戸宇考 野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール1973年石川県生まれ
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

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