2年目4月のおでかけポイント
No.13 向島百花園
環境:森林、池
東京23区内での野鳥観察を始めて、2年目になりました。野鳥の姿を探すには、やはり樹木の存在は大きく、木々がある場所を訪ねるのが大切であることもわかってきました。しかし、いわゆる下町のエリアは住宅が密集しており、鳥がゆっくり観察できそうな場所を探すのは難しいと判断。 そこで東京都公園協会のホームページを調べてみました。すると、墨田区に向島百花園という庭園が掲載されており、木々が多い庭園だとわかりました。また、昭和14年から開園という歴史もあることから、昔から鳥たちが人知れず立ち寄っている環境なのではないかと予想し、足を運んでみることにしました。
園内に入ると、周辺のマンションなどが見えるものの、芽吹いた木々の やわらかな緑が多く、そっと彩りを添える春の花が目を楽しませてくれ ます。都会の真ん中で、こういう季節を感じることができるだけでも贅沢な時間です。
取材当日はやや空模様が怪しかったのもあって、到着直後は鳥の姿はまばらでしたが、池のそばに来ると、見慣れた後ろ姿の鳥が立っているのが見えました。
アオサギです。頭の後ろに伸びる細長い冠羽がないことや翼の羽の色が背中の色と違っている点を考慮すると、まだ若い個体のようです。あまり私がジロジロ見たのがいけなかったのか、しばらくすると飛び去ってしまいました。都会の鳥は人に慣れていると過信してしまい、このアオサギには悪いことをしてしまいました。
次に池のそばではカルガモが休んでいるのを発見。こちらの様子を気に することなく、のんびりしています。そのうち伸びをして、美しい羽を 披露してくれました。
ジロジロ見すぎて先ほどのアオサギのようになってはいけないとカルガモの観察を止めて次の鳥を探しに歩き始めると、何やら後ろから近づいてくる気配を感じ、振り向くとなんと先ほどのカルガモともう一羽、合計2羽が私の後をついてくるではありませんか!
このカルガモ2羽は私から餌をもらえると思っていたようですが、しばらくしてどうも私にその気がないことを察知したようで、また池の方へ戻っていってしまいました。
続けて2種類大きな鳥を見ていたので、小型の鳥を探すと、散策路上に スズメが餌をついばむ光景が目に入りました。緑色のちょっと細長いものをくわえていたのでどうやら虫をたべていたようです。春になって虫も 動き出し、体に栄養を蓄えているのかもしれません。
バードウォッチングで野鳥の種類を多く観察するために必要なことは、 耳を澄ますこと。さらにスズメの観察で小さな動きに目が慣れると藪の中の微かな動きにも反応するようになります。ツツジの茂みでスズメくらいの鳥が動き、「チッ、チッ」という声が聞こえてきました。
双眼鏡で確認すると、アオジのようです。しかし、ツツジの茂みにいる 個体はずっと茂みの中でウロウロしていて、まったく出てきません。何とかアオジの姿を見たいと思っていると、頭の上からも同じアオジの声がしてきました。どうやら2羽いたようです。時々周囲を見回してみることも大事なことと改めて感じた次第です。
そう思って改めて周囲を確認。ツグミがそばで地面を歩いていました。
木にはムクドリとヒヨドリもいました。
今度はカサカサと音のするほうに視線を向けると、キジバトが歩いていました。あっというまに本日新たな3種を観察。
あちこちに視線を向けて少し疲れたので、ベンチで一休みをすると、すーっと目の前を通過した鳥がいました。尾を滑らすように飛行してポンと枝に止まった姿は、前にも見たことがある黒い頭に空色の長い尾。オナガです。尾の先端が白い部分もはっきり見えました。
このオナガの観察の後、なかなか鳥が出なくなりました。これまで向島百花園で観察できた鳥をチェックしていると、今回新しく観察できた種類がなく、ちょっと淋しく思っていました。でも、せっかく来た場所なのでお弁当を食べてから百花園を出ることにしました。この判断がよかった!
お弁当を食べていると、陽射しが帰った青空の高いところから、春らしい小鳥のさえずりが聞こえてきました。なんとヒバリです!
ヒバリのこの連載で初めての出現。地図を見ると、2kmほど東側に荒川が 流れ、グランドがありますので、そのような環境を使っているヒバリが いて、その一羽が風に乗って百花園の上空でも鳴いたのでしょう。 ラッキーでした!
今回の観察で新たに観察できた種類はたった1種類ではありますが、思いがけず出会えたヒバリで、心はもう春風に乗ってどこまでも飛んでいけるほどにウキウキしていました。
最後まで諦めないことが大事だと痛感した一日でした。できれば今年 初めてのツバメが見たかったのですが、それは次回のお楽しみという ことで。
お勧め機種
向島百花園は小さな庭園ですので、双眼鏡で十分。また春は天気が変わりやすいので、防水仕様のバンガードの双眼鏡が威力を発揮します。EDレンズ搭載モデルでしっかり観察するのも良いですが、Orrosシリーズのような小型軽量の機種をバックに忍ばせてスマートな野鳥観察もお勧めです。