望遠鏡性能を100パーセント発揮させる三脚の選び方の5つのポイント

望遠鏡性能を100パーセント発揮させる三脚の選び方の5つのポイント

 実は望遠鏡選びよりも大事!三脚選び

 

 バードウォッチングを始めて野鳥に目が慣れてくると、双眼鏡よりももう少し詳しく見たいという衝動が起きます。その際に役立つ道具が『望遠鏡』ですが、その望遠鏡を載せる三脚について、今回はお話しします。

 というのも、バードウォッチング初心者の方は、望遠鏡選びには資料集めをしっかりして、とても時間をかける人が多いのですが、三脚の選択ではそれほど細かく見ない方が多く、機能を発揮できていないことが非常に多いのです。

 望遠鏡を買う前に、ぜひ三脚の選び方を知っておいて欲しいです。

 

 

三脚の各部の名称を覚えよう

 

 まず三脚の各部分の名称を紹介します。

雲台…望遠鏡やカメラと三脚をつなぐ台座。

パン棒…望遠鏡やカメラの向きを変えるハンドル。雲台の種類によってはないものもある。

エレベーター…脚部分より上にある三脚の高さ調整のためのポール

脚ロック…脚の高さを調整するもので、ネジ式(ツイストロック)とレバー式がある

各部の名称
各部の名称
 

 

三脚選びのポイントは5

 

 三脚選びで大事なことは以下5つです

 

  • 耐荷重
  • 高さ
  • 重さ
  • 脚部の強度
  • 畳んだ時の全長

 

に注目しましょう。

 

 

①耐荷重

 三脚のカタログに掲載されている数値には雲台の重さは入っていません。そのため、購入時に絶対にしてはいけないのが、望遠鏡やカメラの重さだけを基準すること。そのため、私としては雲台と望遠鏡の総重量を考慮して、最低でも三脚の耐荷重の数値の1.5倍以上のものを選ぶことをお勧めします。例えば、望遠鏡800gで雲台400gならば、総重量が1.2kgなので、三脚の耐荷重は最低でも1.82.0kg以上のものを選んでいただきたいです。そのくらいの余裕があったほうが、望遠鏡をのぞいた時に揺れが少なく、安定した画像で野鳥観察ができます。


望遠鏡の大きさと重さによって、最適な三脚を選ぶことは大切

 

 

 

 

②高さ

 

 高さで大事なことは、エレベーターを伸ばさないで自分の背丈と合うものを選ぶことです。エレベーターを伸ばして使うと不安定になりやすく、転倒する恐れが増すばかりではなく、風によって振動を拾いやすくなって、望遠鏡で観察しているときの画像が大きく揺れてしまいます。これでは、どんなに自分に合った望遠鏡を使っていても良い観察はできません。エレベーターを上げずに良い姿勢見られる高さの三脚を選びましょう。



エレベーターを伸ばさずに使うことを前提に高さを決めよう。



この状態は重心が高くなって非常に転倒しやすい。

 

 

③重さ

 

検討すべき「重さ」は、

雲台+望遠鏡+三脚の総重量

です。重すぎると体への負担が大きすぎて活躍の機会が減るばかりでなく、持ち運びの距離が長いときには疲れの原因にもなります。私が持っている一番重い望遠鏡と三脚のセットは総重量が約4kgとなり、平地での使用に限っています。山での散策用は軽量望遠鏡をもう一台買って軽い三脚とセット(総重量は約1.8kg)を使っています。他には、風の強い環境では、多少の重さがあったほうが望遠鏡で見た画像は安定するので、海岸や沼地、広い水辺など風の強くなりやすい環境での観察が多い人は、自分の体力と相談した上でなるべく重い三脚を購入したほうがいいでしょう。

 

 

裏技!?折りたたみ式の三又脚!

 

 いろいろ検討したけれど、三脚が重いという方には、一脚を使用するという手段もあります。手を離すことはできないために、自分の見つけた鳥を同じ望遠鏡で共有するのはできませんが、バンガードでは、マイクスタンドのような一脚の先に折りたたみ式の三又の脚がついた機種があります。一人で観るという状況であれば、使用を検討してみてはいかがでしょうか?一人で海岸でのシギチドリ類を観察する場合や、カワセミなどを一日座って観察するときなどには、荷物の軽量化に役立つでしょう。

折りたたみ式の三又脚(撮影のために自立させていますが、実際は手放しをしないようにお願いします)


 

 

④強度

 

 野外での観察では、風の強い日もあるので、それに備えて軽量のプラスチック製のものはいくら軽いからといっても控えたほうが良いでしょう。アルミ製やカーボン製のものを選ぶことをお勧めします。脚のロックの部分は、ネジ式かレバー式かは好みによりますが、レバー式は砂や土を常に綺麗にしておかないとロックの部分に噛んでしまうことがあります。そのため、私はネジ式三脚を選んでいます。バンガードの三脚はネジ式(ツイストロック)を採用しているモデルが多く、初心者の方でも安心してバードウォッチングのツールとして選んでいただけます。

 カーボン製のものはアルミに比べると非常に高価です。時折カーボンの中では安い設定のものが見受けられますが、それはカーボンの巻いている回数の違いが大きな理由ですので、強度はやや劣ると考えて用でしょう。バンガードの三脚は6層クロスカーボンを採用しており非常に丈夫にできているので、写真のように踏んでも問題ない強度を有しています。


バンガードの三脚に使用されているカーボン。150kg(パイプ径:26mm)130kg(パイプ径:23mm)に耐えられる強度をもつ。


踏んだくらいでは折れない丈夫さ!

 

 

⑤畳んだときの全長

 畳んだときの全長は、移動時の便利さにおいて、重要な項目です。野鳥観察に行くときのリュックに入るのかどうか、今一度確認をお願いします。移動の際に両手が空くと鉄道など公共交通機関で移動するときに大事ですし、どなたかの車に乗せてもらう場合も自分の席で持っていられるのかは、多くの人と移動するようなケースでは重要な要因です。私は最初に買った三脚は父のお下がりで大きなものだったので、車に載せていただいた方に迷惑をかけてばかりでした。

 また、飛行機では60cm以上の長さの三脚は持ち込めなくなりましたので、遠出をされることが多い方は、畳んだ時の大きさも重要な選択基準になります。購入時に今一度確認しておきましょう。

 

 

雲台はパン棒の付いたものを選ぼう

 

 雲台選びはバードウォッチングの望遠鏡用三脚を購入する上では最も重要な項目の一つです。三脚には雲台が付属しているものがありますが、その有無で決定するのではなく、あくまでも上記の①〜⑤を優先して雲台は気に入ったものに取り換えることで対応するほうが良いと思います。三脚の付属品にもあるボール型(ボールヘッド)の雲台は私も使うことはありますが、最近は操作のしやすさと、鳥が移動したときの追う動作を微妙に調整できることから、パン棒のあるものが気に入って使っています。


ボールヘッドの雲台。付属されていることもある。

パン棒のある雲台。棒は1本、2本、3本などがあり、それぞれで締める作業ができるものもある。バードウォッチングでは、操作のしやすさから一本のものが好まれる。長いと微妙な操作ができるが持ち運びの際にはややかさばることもあるので、自分のスタイルに合うものを選ぼう。

 望み通りのアングルに、ポジションに

 

担いだ時の前後の重量配分

 

 これは実際に購入したい望遠鏡とのバランスの問題なので、観察会などに出かけた時に、自分の購入した(あるいは希望する)望遠鏡を持っている方に、直接聞くのが良いでしょう。もし可能ならば、少し担がせてもらい、前後の重量配分が疲れにくくないか、確かめさせてもらいましょう。一番疲れないのは、自分の使いやすい高さで肩に担いだ時に、そのまま手を離しても大丈夫なくらいにバランスが取れている状態です(注意:絶対に手を離してはいけません)。その状態でそっと手を添えるだけで維持できるならば、どの姿勢でも体がバランスを取りやすく、疲れにくくなります。後ろに引っ張られるような感覚や前に屈むような状態になるようだと、バランスが取れていないので、それは望遠鏡だけではなく、あなたの体にも合っていない三脚です。別のものに変えましょう。

 

 

ブレを抑える工夫

 

 野外での使用するとき、風が全くないという状況はまずありませんので、どのような状況でも三脚は少し揺れてしまうものです。その揺れを少しでも軽減するために、いくつかの方法がありますが、今回はストーンバッグを紹介します。

 バンガードでは、三脚用ストーンバッグALTA SBMというものがあります。三脚の脚部に写真のように取り付けて、重石となるもの(バードウォッチングの場合は図鑑など)を入れておくと、振動が抑えられます。持ち歩きのために少し軽い三脚を購入した時には、これで重さを稼いで振動を軽減することができます。

三脚に取り付けるストーンバッグ。ちょっとした荷物置きにもなるので、非常に便利。

 

神戸宇考 野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール1973年石川県生まれ
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

 本サイトの掲載写真・イラスト・文章の許可のない転載、複製などは固くお断りします。

 



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