目次
1.服装はアースカラーで
2.靴・長靴の選び方
3.雨具は携帯すべき
4.図鑑の選び方
5.更に楽しむために
6. 野鳥のお宅に伺うという気持ち
1. 服装はアースカラーでコーディネイト
よくアマチュア野鳥カメラマンによく見られるのですが、近所の公園などでのバードウォッチングで迷彩服を来る必要はありません。もともと人の姿を見慣れている場所では、黄色や赤などの入った服でも、実際は野鳥たちがそんなには警戒していません。しかし、出かける環境をイメージして、そこに溶け込むような色合いを基軸にした服装で出かけると、思いがけず鳥が近くまで来た時に、比較的長くその場にいてくれることがあるのも確かです。黄色や赤などのある服装は、アクセントとして自分らしい色を取り入れた程度にするとよいでしょう。
長袖や長ズボンの着用するようにしましょう。野鳥のいる環境というのは基本的に虫の多い場所ですし、ウルシの仲間などで肌がかぶれる危険やトゲで怪我をするリスクもあります。長袖長ズボンはそれを軽減してくれます。真夏の暑い時期には、夏は通気性のよい衣類で、肌を保護することをお勧めします。
2. 靴・長靴の選び方
バードウォッチングでは、基本的には底のしっかりしたウォーキングシューズを履くほうがよいでしょう。歩き回るにしても、じっと待つにしても、靴底がしっかりしていることで疲れを軽減できます。私は靴の中が蒸れにくい素材を使っている靴を履くようにしています。足の疲れは、家に戻るまでの安全にもつながります。1000m以下の山でも足首までしっかりある靴を着用することは、捻挫など帰りの下り坂で思わぬ怪我を防いでくれます。
「長靴はどのようなものいいですか」という質問を受けますが、私はなるべく膝下まであるゴムが厚い長靴を選ぶようにしています。靴下も厚手のものを履くと、足裏の負担や草やぶなどでの歩行でダメージを減らしてくれます。私は弘進ゴムのザクタスZ100(写真04)を使っています。滑りにくくて、今まで履き口に溝が切ってあり、高さを自分で調節できるようになっていたり、座り作業等で擦れやすいふくらはぎ部分も切れるようになっています。
最近は折りたたみのできるゴムの薄いものも市販されていますが、凹凸の多い自然度の高い環境には不向きで、都会の公園での使用以外はあまり用いないほうが怪我へのリスクを抑えられると私は思っています。
天然ゴムの長靴が人気ですが、経年劣化でヒビ割れがしやすい。ポリ塩化ビニル製のものは丈夫ですが、低温環境には弱いなどの不適。
3. 雨具は携帯すべき
折り畳み傘はいつも携帯しましょう。雨ばかりでなく、陽射しが強いときに役立ちます。上着とズボンで分離されている蒸れない素材(ゴアテックスetc)のものを選ぶと、夏では防寒にも役立ちます。コンビニなどのビニール製のものやホームセンターなどで扱っている安物は歩くと汗が籠って体や衣類が濡れて、かえって体が冷えやすくなりますので、避けたほうが無難です。
なるべくコンパクトにしたい場合はポンチョという選択肢もあります。ただし、下が開いているために保温性には欠けるので、防寒用には用いないほうがよいでしょう。
4. 図鑑
本屋さんへ行くと、イラストや写真を使った図鑑がたくさんあって迷ってしまいますが、チェックすべき部分は、解説文。自分にわかりやすいかどうかで選ぶようにしましょう。解説が複雑でも細かい記述が合う人もいれば、解説は簡潔でもイラストや写真が多いほうが理解しやすい方もいます。
また、持ち運びをイメージしておくことも大事です。分からない野鳥に会ったときにすぐに調べる気になる大きさの本というのも重要な要素です。私が最初に使っていた図鑑は、たくさんの種類が載っている大きな図鑑でしたが、調べるのが大変でした。
最近は図鑑の内容をタブレット端末などでも見られるようになっていますが、野外では雨になることも多いですし、画面にダメージを負ってしまうこともしばしばです。また、光の条件によっては画面が非常に見えにくいですし、バッテリー切れになるとまったく役に立たないので、アナログである本を持ち歩くほうが、フィールドでは役に立ちます。
たくさんの図鑑を持つよりも、最初に買った一冊をボロボロになるまで使い込むほうが、鳥をしっかり覚えますので、まずは本屋さんで自分に合う本を探しにいきましょう。
5. 図鑑の選び方【写真か、イラストか】
よく「写真図鑑とイラスト図鑑、どちらがいいですか?」という質問を受けます。イラスト図鑑と写真図鑑にはそれぞれの特性がありますので、それを理解した上で自分にあったものを選ぶのがよいでしょう。ネットの評価は個人的な見解ですので、頼らないほうがよいでしょう。
写真図鑑のメリットは、写真と自分の見た鳥の照合が楽であること。野外で実際に撮影されたものなので、写真の印象がそのまま合わせやすいのが第一の特徴です。しかし、これには欠点もあって、撮影された個体の差や撮影時期の多少のずれで印象が大きく変わってしまう可能性があります。また、撮影された角度の影響で、文章中の特徴が確認しにくかったり、光の条件によって色のバランスが少しずれていることもあります。そのため、観察した個体と写真の個体が少し合わないことがよく起こり、それが原因で図鑑を見ただけでは種名が判明しないケースも出てしまいます。
その一方で、イラスト図鑑は描いた人の経験値が反映されるので“著者が観察した野外で見られる状態の平均的なもの”を描いているため、イラストと同じ羽の状態ではないけれど、雰囲気が合うというものが多くなります。そのため、購入の相談する相手がベテランになればなるほど、イラスト図鑑を勧めることが多くなる傾向にあります。
まず、野鳥の観察会などに出かけてみて、どんな図鑑があるのかを参加者の皆さんから聞いてみて、自分がいいなと思ったものを入手するようにすることをお勧めします。
6. 記録ノート
バードウォッチングに出かけた時に、どんな野鳥に出会ったかを記録しておくのは、次回の訪問の参考にもなるので大事なことです。場所にどんなルートで行ったか、いくらぐらいかかったか、誰と行ったか、お昼ご飯のおいしかった場所等も一緒に記録すると良いでしょう。野外でメモ等をしやすい大きさのものが良く、手帳サイズのもので記録するのが便利ですが、最近はスマホやクラウドで管理する人も増えていますので、自分のやりやすい方法でよいと思います。
写真08 日本野鳥の会や野鳥雑誌バーダー編集部が作成した記録ノート(フィールドノート)など。右下は一般的に市販されているコクヨの測量野帳。多くの人が使っています)
写真09は右上のカバー付きのフィールドノートの中身(カバーの中にノートと日本で記録された野鳥のリストが入るようになっていて、便利です)
7. 更に楽しむために
・水筒、お弁当、お菓子
お弁当や水筒などの飲食関連のものは、最近はコンビニが増えているので現地で調達する人も多くなっていますが、環境のことを考えるならば、手製のお弁当や水筒を持参するのもよいでしょう。バードウォッチングを初めてから環境意識が高くなり、ゴミを減らす努力を始めるのは若い世代でよく見受けられます。
・虫除け、日焼け対策も必要
野鳥が多くいる環境は、鳥の餌となる昆虫も多い場所であることが多いので、肌の弱い方は虫除けも持って行くことをお勧めします。また種類によってはかぶれる場合もあるので、自分の肌に合った薬も持参しておくと良いでしょう。日焼け対策も最近は季節を問わず、必須ですので、日焼け止めや帽子を被るなどの対策をしておくほうが良いでしょう。
・鳥の声を覚えるにはCDを
実際にバードウォッチングへ行くと、鳥の姿を見つけるよりも、声で気配を察知することが大切になりますが、最初は鳥の声がすることはわかっても、その声の主が何という種類の鳥かわからないものです。
鳥の声で種類を判別するには、やはり鳥の声のCDをよく聞くことが大事です。何度もその鳥の声を聞いて、できればその声を聞いている時に、図鑑でその種類の載っているページを開くのがよいです。
6. “野鳥のお宅に伺うという気持ち”を忘れずに
最後に忘れてほしくないのが、この「鳥のお宅に伺う気持ち」です。バードウォッチングを始めて楽しみ方が分かってくると、たくさんの種類を見ることや、近くで観察したいという気持ちが高まってきて、つい観察している道をそれて入って行ったりしてしまうことがあります。しかし、それは鳥の生活に大きな影響を与えるので慎むべき行動です。
野鳥を観察しに行くことは、鳥のお宅にお邪魔すること。自分の家でされたら嫌だと思うことはしないというのが、鳥と人のおつきあいでも大事なことです。
もちろん、一緒に鳥を見に行った人、あるいは出かけた先で出会った方にも、あなたのやさしさを忘れずに。
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野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)
プロフィール1973年石川県生まれ。 5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。 |
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