北海道の草原でさえずる鳥を満喫しよう

北海道の草原でさえずる鳥を満喫しよう

北海道の野鳥を満喫できる野付半島

バードウォッチングに興味を持ち、日常的に図鑑を眺めるようになると、「会いたい鳥」がリストアップされていくのですが、その鳥たちの多くは北海道に行くと見られる機会が増す種類が多いものです。もちろん、北海道以外でも記録はあるのですが、北海道のほうが個体数が多かったり、見やすかったりします。


私は北海道へ鳥を見にいく時には道東を巡ることが多いのですが、その中でもバードウォッチングがしやすく、見つけやすいのは野付半島です。


ネイチャーセンターがあるので、いつでも最新の野鳥情報を入手できる上に、平坦な地形で遊歩道が歩きやすいため、バードウォッチングに集中できる場所です。野付半島ではタンチョウも繁殖しています。草地にポツンと白い点で見るタンチョウは、給餌場所で群れる姿とは違う、自然の姿で、私はこちらのタンチョウを見ることも大事だと思っています。


アクセス


レンタカーがベスト

公共交通機関は阿寒バスで標津から野付半島ネイチャーセンターへ一日数本ありますが、ダイヤがバードウォッチングにはあまり適さないので、個人旅行の場合はレンタカーがお勧めです。 以下、各空港から野付半島ネイチャーセンターへ、レンタカーでのおおよその時間です。訪問時の参考にしてください(休憩含まず)


中標津空港から約1時間
釧路空港から約2時間半
女満別空港から約2時間

北海道での運転の注意事項

北海道(特に道東)では普段の運転とは違う注意事項があります。エゾシカの飛び出しです。近年、道東ではエゾシカが増えており、交通事故が増えています。道路脇の茂みにいて急に道に出てくることがあるので、法定速度を守って安全運転でお願いします。春から夏は親子連れが増え、子ジカが急に道に出てくることも増えています。十分気をつけてください


おすすめ時期は5月中旬

さえずりや鳥の食べ物を頼りに探す

個人的に野付半島へのおすすめは5月中旬です。東京では初夏の雰囲気があるこの時期でも、野付半島では夏鳥が到着して間もなくて、縄張りを作るために一生懸命にさえずっていたり、餌取りに夢中で、じっとしていれば側にやってくることもしばしばです。

 

ノゴマを観察したければ午前中!

北海道の湿原や草原でまず観察したい鳥は、喉が赤いノゴマです。周囲よりも少し高く伸びたハマナスの枝などで鳴くことが多いので、比較的見つけやすい鳥です。大変美しい声で鳴くので、鳥の声のCDなどで事前に予習してから行くと、より発見が早くなります。


見やすいところに止まる鳥たちを見分けよう

ノゴマと同じような場所に止まる鳥たちがいますので、それも一緒に観察しましょう。まずはアオジです。ホオジロの仲間で喉から腹にかけての黄緑色がきれいな鳥です。


次はノビタキ。頭が黒く、胸がオレンジ色の鳥です。飛んでいる時に白黒の模様が目立つので、ノゴマよりも目立つことが多いです。


ノゴマよりは少し見つけにくい鳥ですが、同じ環境で見ておきたいのがオオジュリンとベニマシコです。

オオジュリンはアオジと同じホオジロの仲間です。茂みの近くにいると頭の白黒模様も溶け込んでしまうので見つけにくいかもしれませんが、これも事前にCDなどで「さえずり」を予習しておくことで見つけられる鳥です。


ベニマシコは種子を好んで食べる鳥なので、遊歩道沿いで写真のような草の種がある場所でしばらく待ってみるのも良いでしょう。鳥たちの食事を邪魔しないように、5-10mほど離れた場所で待つようにしましょう。



午後から夕方のバードウォッチング

午前中に他の場所を観光してからだと、野付に行ってもバードウォッチングは楽しめないの?と不安に思う方がいるかもしれません。しかし、野鳥の多い野付半島は、午後でも楽しい場所です。まずは飛んでいるオジロワシを探しましょう。近年、北海道では夏でもオジロワシを簡単に見ることができるようになりました。


運が良ければ、野付半島ネイチャーセンターへ行く途中の電柱に止まる姿を見つけられるかもしれません。


夕方はオオジシギを!

もし時間に余裕があるならば、ぜひオオジシギを見てから帰っていただきたいです。ハトくらいの大きさで、嘴がまっすぐ長い鳥です。しわがれた大きな声でズビー、ズビーと鳴きながら上空を飛び回っているのですが、突然ザザザザという大きな音を立てて急降下をします。実はこれはディスプレイフライトという縄張り誇示の行動の一つで、この迫力は見た人にしかわからない光景です。このオオジシギは最近著しく個体数を減らしており、複数の個体が飛び回りながら見られる場所が徐々に減っています。


海岸線は思わぬ出会いの宝庫

5月はシギの群れも野付半島にはやってきます。私は海藻の打ち上げた場所をよく確認しているのですが、キョウジョシギなどがよく見られます。


キョウジョシギはごく普通のシギの仲間ですが、そういう鳥を観察していると、他の鳥がふとそばまで来ていることも多いのが野付半島のおもしろいところです。私がキョウジョシギを見ていた時に、そばに来た鳥で驚いたのはヤツガシラ。関東や大阪で出現したら大騒ぎになって、たくさんのバードウォッチャーが集まってくる鳥の一つですが、この時は独り占めでの観察を楽しみました。(ネイチャーセンターへ報告をすると、5月の記録は珍しいそうで、貴重な記録になりました)


沖合にもウミアイサなど鳥の姿を確認できますが、望遠鏡が必須です。




6月には別の鳥の楽しみも

到着が遅い鳥たちがいる

5月中旬の観察ポイントをお伝えしてきましたが、6月にはまた別の鳥たちが北海道には到着します。シマセンニュウやコヨシキリなど、ヨシが伸びてからやってくる鳥たちです。彼らに会いに季節を変えて野付半島に来るのも良いものです。タンチョウにもヒナが生まれて、運が良ければ、愛くるしい姿を見ることができるかもしれません。

同じ場所であっても、季節を変えるだけでまた違う楽しみができるのも、バードウォッチングの良いところです。

 

 

記事:野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)
神戸宇考プロフィール

1973年 石川県生まれ。
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。 5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。


本サイトの掲載写真・イラスト・文章は許可のない転載、複製など固くお断りします。すべての著作権を有しています。

おすすめの記事

バードウォッチング初心者にまずやってみてほしい3つのこと

初心者だからこそ楽しい!バードウォッチングを始めよう

すべての記事はこちら 

すべての双眼鏡はこちら。
感動と発見をもっと近くに



0件のコメント


コメントを残す

コメントは表示される前に承認される必要があります。