第2回 白衣の天使「コサギ」をじっくり観察しよう!
- 「カワセミ」といっしょの環境にいる大きな白い鳥
前回紹介したカワセミのいる川を歩いていると、ほかにもいろいろな鳥に出会うと思います。小さい鳥も見かけることもあるかもしれませんが、まずは双眼鏡の使い方に慣れるために川の岸近くにいる白くて大きな鳥、コサギに注目してみましょう。
前回紹介したカワセミはスズメくらいで小さいので見つけるのは難しいこともありますが、コサギは全長(首を伸ばした状態で嘴先端から尾先まで)が60cmほどあり、全身も白く目立つので、見つけるのは簡単です。
河川環境では、以下の写真のような場所にいることが多いです。
水辺が好きな鳥で、川のほかに池や沼、田んぼ、海など、ほとんどの水辺環境に生息しているので、「水のある場所ならば、コサギがいる」と思いながら歩くといいでしょう。事前に「会えるかもしれない」と考えながら歩くだけでも、鳥との出会いは格段に増えていきます。単独でいることの多いコサギですが、群れていることもありますよ。
コサギの特徴は、まず真っ白な体、長い首です。背中には飾り羽と呼ばれるカールした細い羽毛があり、夏は頭に冠羽(かんう)と呼ばれる長い羽毛があります。
冬、冠羽は抜けています。
また、足の指が黄色くなっているのも特徴です。これは一年中変わることがありません。こ遠くを飛んでいても、足の指の黄色さえ見えればコサギと分かります(※注1)。
また、飛んでいるときはイラストのように首をS字型に曲げているのが普通です。
コサギの嘴は細長く、料理に使う菜箸のようです。
この嘴を水の中に素早く突き刺して魚や水辺の生き物を捕らえます。普通に水辺を歩きながら餌を採ることも多いのですが、
コサギには独特の漁法があります。「追い出し作戦」です。網で魚を捕まえたことのある人ならばわかるかと思いますが、岸辺の茂みを足でかき回すと小魚が驚いて出てきますよね。実はこれと同じことをコサギはします。水の中を歩きながら片足ずつ、ズズズ、ズズズと小刻みに動かして驚いて飛び出た魚やエビ、ヤゴなどを食べている風景をよく見かけます。
足の指の黄色になっているのも、黒よりも黄色のほうが魚などを追い出すことに役立っているとも言われています。
普段は水の中にあってなかなか見えにくい足指の黄色ですが、歩行中に足が水面の上に出たときや、透明度の高い水に中を歩いているとき、
電線に止まっているときなどが観察のチャンスですので、挑戦してみてください。
もし、全身が白くて足の指が黒いサギがいたら…。チュウサギ、ダイサギ、アマサギなど別の種類が考えられます。首の長さ、嘴の色、目と嘴の間の色、飾り羽のカールの有無などに違いがあります。季節によって嘴の色が変わるなどコサギとは異なる識別は難しいこともあります。
私の家の近所でコサギを観察していると、声をかけられることもありますね。双眼鏡を渡して見てもらうと、「肉眼で見ているときよりも白さが際立ってきれいだね」と言われることもしばしばですが、先日お会いした方は「こんなにきれいな鳥がいるんだから、川もきれいにしなくちゃね」と言ってくださいました。また一人、自然を大切に思ってくれる人が増えたことに、嬉しくなりました。
注1:「カラシラサギ」という鳥が同じように足の指が黄色いコサギによく似たサギがいますが、日本には時々やってくる程度の珍しい鳥ですので、このように表記しました。
- コサギを探すために適した機種
コサギの好む環境はカワセミとほぼ同環境ですので、前回紹介した機種と同じもので十分ですが、10倍のものをお選び頂くとコサギの「追い出し作戦」の行動をじっくり観察できると思います。
撮影地:神奈川県海老名市目久尻川、神奈川県茅ケ崎市小出川、東京都大田区東京港野鳥公園、神奈川県小田原市酒匂川
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野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)
プロフィール1973年石川県生まれ。 5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。 |
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