神戸宇孝さんの野鳥観察に行こう! 第6回 12月は「ムクドリ」

神戸宇孝さんの野鳥観察に行こう! 第6回 12月は「ムクドリ」

第6回 「木の実が大好きで、芝生の上でノコノコ歩き」のムクドリを観察しよう


 

嘴と足のオレンジ色が特徴

 今回ご紹介するムクドリは、全体的には黒っぽい色をしていますが、頭に白い羽毛があり、嘴と足がオレンジ色をしています。

 

ムクドリの水彩画

 

全長が24cmで、前回紹介したキジバトよりも少し小さめ。キジバトよりも動きも俊敏です。

 

鮮やかなオレンジのくちばしを持つ黒白の鳥が枯れ草の上を歩く姿。ムクドリの画像

 

はじめのうちは双眼鏡ですぐに捉えるのは難しいかもしれません。しかし、ムクドリは群れで行動することの多い鳥ですので、双眼鏡を“鳥のいる方向”に向ければ、群れのどれか一羽が視界に入ります。

 

飛行中の一羽の鳥とともにアンテナに止まる群れの鳥たち

 

ムクドリの行動に目が慣れるまではそのように観察して、いずれ「今日は右から3羽目をすぐに捉える」など試すと良いでしょう。

 

ムクドリのレストランを訪ねよう

 ムクドリはキジバトと同様、市街地や公園、畑によくいますが、全身が見えるのはテレビアンテナや電線、鉄塔によく止まっているときです。

 

電線に整列して止まる鳥たち、ムクドリの群れと青い空の背景

鉄塔の骨組みに止まったムクドリの群れと飛び立つ個体

 

しかし、そのような場所ではキジバトのように“のんびり”ではなく、人間を見つけるとすぐに飛んでいってしまうこともあるので、見つけたムクドリを長く観察するには、彼らのレストランである“採餌環境”を訪ねてやってくるのを待つのが良い方法です。

 

 1つめは、「実のなる木」です。ムクドリはいろいろな木の実を食べますが、その中でもカキノキが大好物。このウェブ連載がアップされる時期(12月)でも、民家の庭先や山裾の里山に収穫されないカキノキの実がまだ残っている場合があり、そのような実を食べに群れがよく飛来しています。実がたくさんあれば群れでやってくるので、そういう場所ではかなり遠くからでもギュルギュル、ガーなどと騒いでいる声が聞こえてきます。

 

木のみを食べに来たムクドリ

柿の木に止まるムクドリと熟した柿、冬の枝の背景

 

 カキノキの実がなくなってからよく訪れているのは赤い実が特徴のトキワサンザシ(ピラカンサ)です。

 

鮮やかな赤い実をつけた常盤サンザシの木とその自然な環境

 

よく生け垣や公園の植栽に利用されているので、名前は知らなくても見たことがある方も多いと思います。カキノキは実ごとに熟す時期が多少ずれますが、トキワサンザシは一斉に熟す(鳥たちにとって美味しい時期)ようで、突然鳥が大挙してやってきます。その光景はよくヒッチコックのホラー映画「鳥」に例えられますが、ムクドリが木の実にやってきている風景はきわめて平和的なものです。

 

 私は鳥の好きな実のなる木の場所を夏のうちからチェックして実り具合などを確認しています。バードウォッチングのおもしろさは、「鳥を見る」だけではなく、「鳥の気持ちになって自然を見つめる」ということだと考えています。

 

 2つめは、芝生のある広場やグラウンドです。

 

都市公園の乾いた芝生とバックグラウンドに電車が通る橋。小さく映っているのはムクドリ


答えはこちら⇒ ムクドリの居場所

 

おすすめ方法は公園の来園者を装って、ベンチやグラウンドを見渡せる土手などでのんびりと座って待つ方法です。その場にいなくても、しばらくすると飛んできて、ノコノコと両足を交互に出して歩く姿を観察できます。一見すると、ただ歩いているだけのように見えるのですが、よく観察すると下を向きながら時々立ち止まり、嘴を地面に突き刺してはまた歩いています。

 

緑豊かな草地で餌を探すムクドリ

 

さらに注意深く観察すると、芝生に突き刺した直後に嘴を開いているのがわかります。

 

枯れた草の上で食事をする二羽のムクドリ

 

 これは芝生の根の隙間に潜む虫を探しているのです。以前この様子を観察していたときに、大きなコガネムシの幼虫を引き出して食べていたシーンに出会ったことがあります。

 

草むらで虫を捕食するムクドリのクローズアップ

 

 キジバトのときのように、止まる場所を重点的にチェックしながら出会いを増やす方法と、今回のムクドリのように餌を採る環境を訪れる方法は、ほかの鳥でも活用できます。図鑑などに書かれているその鳥の食性から、どんな場所へ行ったらよいかを探偵のように考えるのも、けっこう楽しいものです。

 

 行動が活発なムクドリですので、前ぶれもなく飛び去ることもあります。これまでは飛び去る鳥はただ見送ってしまうこともあったと思いますが、今回はもう少し頑張って、ムクドリの飛んだときの特徴を双眼鏡で確認してみましょう。

 

 飛んだときは嘴や足のオレンジ色はわかりにくいので、腰と短い尾の先端の白色を確認しましょう。今まで紹介した鳥たちには、あまり飛んだときに大きな特徴がないのですが、ムクドリはこの白い部分が飛翔時には目立ちます。

 

ムクドリが飛んでいる瞬間を捉えた写真


チェック箇所⇒ 飛ぶ瞬間のムクドリを確認する箇所を説明した画像

 

遠くで地面から飛びたった鳥の腰が白ければ、ムクドリの可能性はとても高くなりますので、ムクドリを観察できたときは普段からこの腰の白に注目しておくとよいでしょう。

 

 ちょっと先の話になりますが、春になるとムクドリも恋の季節になります。群れの中でもカップルが生まれ、群れの中でも2羽が共に行動する光景をよく見られます。

 

草むらに隠れるムクドリのペア

 

その2羽も4〜5月になると巣材を嘴にいっぱいくわえて歩き、営巣場所である樹洞などに運ぶ姿が見られます。

 

芝生の上で枝を集めるムクドリのカップル。鳥が巣作りのために行動している様子

 

暖かい日だまり溢れる土手にのんびり座って、ムクドリのカップルを応援するのを、これから春の楽しみにいかがでしょうか?

 

撮影地:大阪府堺市、神奈川県(海老名市、座間市、茅ヶ崎市)、埼玉県(飯能市)、千葉県(鴨川市)、東京都(文京区)、

 

 ムクドリは芝生の上や枝先など明るいところにいることが多いので、どの機種でも十分に観察できますが、嘴のオレンジ色などをしっかり見たいならば、やはり対物レンズの大きなものをお勧めします。山を登る必要もないので重さはさほど気にしなくてもよいでしょう。明るさと高めの倍率の双眼鏡を選ぶといいと思います。

 

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 神戸宇考 野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール1973年石川県生まれ
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

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