神戸宇孝さんの野鳥観察に行こう! 第5回 11月は「キジバト」

神戸宇孝さんの野鳥観察に行こう! 第5回 11月は「キジバト」

第5回 水辺から山野へ。キジバトで観察眼をみがこう!


キジバトは、“山野の鳥観察”への入門種!
キジバトのイラスト
 これまでは水辺の鳥を紹介してきました。水辺は山野に比べて視界が広く、鳥が杭や石の上、水面にいて全身が見えることが多いので、ビギナーが双眼鏡の使い方を練習するにはよい場所だからです。この連載も5回目を迎え、皆さんも鳥を見つけることに慣れてきたと思いますので、今回は葉の陰などに隠れることが多い山野の鳥の観察に挑戦してみましょう。そのステップアップでお勧めなのが、キジバトです。

野生のオリエンタルタートルダブが自然の茶色い草の上に静かに立っている、注目すべき赤い眼と灰色がかった羽の詳細を示すクローズアップ写真

日光を浴びた木の枝に止まるオリエンタルタートルダブのプロフィール写真、その繊細な灰色と茶色の羽毛パターンが鮮明に映し出されている、自然野鳥観察のための魅力的なイメージ

 キジバトの大きさは33cm。鳥との距離が多少あっても肉眼で確認できる大きさです。住宅地や公園など身近な環境でよく姿を見かけます。

都会の背景に映える裸の枝に止まるハトの写真、冬の季節を感じさせる落ち葉のない木々と建物のシルエットが特徴的なアーバンウィルドライフイメージ

前回紹介のカワウに比べるとかなり小さいので最初は見つけにくいかもしれませんが、頑張ってください。

公園の灰色のハトとはどこが違う?

 写真のキジバトを見て「駅や公園、神社の境内にいるハトと同じではないの?」と思った方もいらっしゃるでしょう。神社や公園などにいる灰色や白っぽいハトは、もともとはカワラバトというヨーロッパ原産のハトを品種改良した伝書バト(レースバト)が野生化したもので、キジバトとは別の種類です。バードウォッチャーからは“ドバト”と呼ばれています。

 キジバトの特徴は、頸の青白模様と、背中から翼にかけての鱗模様。
キジバトのアップ写真

頸を引っ込めていて青白模様が見えにくいこともありますので、その場合には鱗模様を手がかりにしましょう。

繊細な灰色の羽を持つオリエンタルタートルダブが農地の乾いた稲わらの上で休憩している姿を捉えた写真、鳥類の自然な生息環境と野生動物保護の観点から価値のあるイメージ

青空を背景に木の枝にふっくらとした羽を膨らませて座るオリエンタルタートルダブの写真、早春の気配を感じさせるほんのりと芽吹き始めた木々のシルエットが印象的な自然観察イメージ

もし両方とも見えにくい場合は“次のキジバト”を探しに行きましょう。キジバトはたくさんいますので、「これは間違いない!」というものをまずは数多く見て、しっかり覚えることをおすすめします。

 一方、ドバトは模様が多彩です。参考に、ある公園に群れていたドバトの写真を貼付します。

都市環境に適応する野生の灰色のハトが太陽光を浴びながら岩の上を歩いている、自然光と影のコントラストが際立つ都市の野生動物のクローズアップ写真

岩の上に立つ美しい虹色の光沢を持つ野生のハトのクローズアップ写真、新緑の草と都市のコンクリートのコントラストが春の訪れを告げる都市生態系の一コマ

水辺の岩の上に優雅に立つ野生のハトの写真、羽に見られる美しい虹色の光沢と明るいピンクの足が特徴的な、自然な生態系の一部を捉えた鮮明なイメージ

羽の模様が一羽ずつ違っていますが、頸の青白模様はなく、嘴の根元にある鼻の部分が白く盛り上がっているのが特徴です。

水彩画のアートワークで描かれた二種類のハトの頭部のイラスト、左には温かみのあるベージュ色のキジバト、右には鮮やかな青色のドバトがあり、それぞれの特徴的な目の色と羽の模様が詳細に表現されている
また、キジバトはドバトのように大きな群れになることは少なく、だいたい単独か2羽でいることがほとんどです(ごくまれに10羽程度の群れを作りますが、渡りの途中や牧場など餌が豊富だという特殊な条件の場合です)。もちろん、ドバトが単独や数羽でいることもありますので“群れか否か”という習性は、決定的な特徴ではありません。参考程度に識別材料にしてください。

キジバトを見つけよう!

 キジバトに出会うためには、まずは電線や屋根のテレビアンテナを見ましょう。

晴れた日の日本の住宅街の風景写真、並木道と整然と配置された家々、静かな通りに駐車している車と電線が空に線を描いている、平和で日常的な都市生活の一コマ。どこかにキジバトが映っています。

キジバトのいる場所

"電線に止まるキジバトのシルエットが映えるクリアな青空の背景の写真、鳥の詳細な羽のパターンと鋭い赤い目が特徴的な、都市野鳥の穏やかな姿を捉えたイメージ

キジバトを見つけることに慣れてきたら、次は街路樹などに止まるキジバト探しに挑戦してみましょう。

 下の画像の中にキジバトがいるのですが、どこにいるか、わかりますか?
晴れた秋の日に撮影された、木々が生い茂る通り沿いに駐車された車両の写真。新緑が茂る木々が光と影を作り出し、静かな都市の住宅街の雰囲気を感じさせるイメージ

 もう少し範囲を狭めてみましょう。見つかりましたか?


 では答え合わせです。ここです。
"日差しを浴びた木の枝の間に隠れるキジバトの姿を捉えた自然写真。光と影が織りなすパターンと新緑の葉が生き生きとした春の日の穏やかな雰囲気を伝えるイメージ

 いかがでしたか?

 キジバトは“ぽっちゃり”した鳥なので、写真のように、ある程度太さのある水平の枝に止まることを好みます。

晴天の下、公園の遊具が点在する都市の公園の写真、周囲を囲む緑豊かな木々が都市環境の中で自然の息吹を感じさせる、家族や子供たちの憩いの場を提供する平和な風景

答え合わせ

図鑑でのキジバトの解説では「公園や市街地にいる」などとありますが、これだけの情報では見つけにくいものです。鳥を見つける力を養うため、「どんな場所に止まっていたか」にも注目しましょう。こういう経験を積むことで、“発見する視力”が上がっていきます。

 どんな場所で餌を採っているかも注目してみましょう。

 キジバトは、畑や公園、道沿い、空き地などでノコノコと地面を歩いて、主に草の種を食べています。秋から冬には木の実も食べることがあります。


 何を食べているかは分かりにくいのですが、エノコログサやヒシバと呼ばれる植物の生えている場所によく来ています。道ばたでそのような植物を見かけたときには、「ここもキジバトの餌場になっているかもしれない」と想像してみるのもおもしろいものです。

乾燥した草が茂る排水溝の周囲の写真、都市計画と環境整備の重要性を示唆する、管理されていない草地の風景

本当にキジバトが餌をついばみに来ているシーンに出会うかもしれないですね。ハコベも好きなようで、春には写真のような風景も見られます。



次は飛んでいる鳥を双眼鏡に入れる練習!

 さて、空を飛ぶキジバトはとてもスピードが速いので、双眼鏡でとらえることはなかなか難しいと思います。まずは目で追うようにしましょう。
改行

 しかし、キジバトは遅い飛び方をすることがあります。ディスプレイ・フライトと呼ばれる求愛や縄張り主張のために行う飛び方で、パタパタと深く羽ばたいて高度を上げ、ある程度の高さになるとグライダーのようにゆっくり滑空します。


この飛び方をしたときに、飛んでいる鳥を双眼鏡で追う訓練をしましょう。コツは飛ぶキジバトを目で追いながらそのまま双眼鏡をかざすように動かすことです。これを積み重ねることによって、飛行する鳥も双眼鏡でとらえられるようになるでしょう。

あなたの家に居候しているかも?

 キジバトは一年中繁殖します。巣は街路樹や公園などの樹上2mほどの高さに木の枝を雑に組みます。民家の庭先にも作ることがあり、私の自宅の庭でも数年に一度、キジバトが巣を作ります。

若い鳥が木々に囲まれた巣の上に安静にしている姿

2010年の巣は道路際の地上から1m50cmくらいの高さの茂みでしたので、私が教えるまでご近所の皆さんはまったく気が付かなかったとのこと。もしかしたら、あなたのすぐ傍でもかわいい雛が育っているかもしれません。

 写真のように2羽でイチャイチャしているキジバトがいたら、その近くでも巣が作られるかもしれません。

緑色の柵にとまる二羽の鳩が向き合っている様子

 身近な生き物たちの営みに気が付くようになると、人生はより楽しいものになりますね。私もそうなった一人です。

撮影地:静岡県(沼津市)、埼玉県(入間市、坂戸市、所沢市)、神奈川県(綾瀬市、海老名市、横浜市)

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 神戸宇考 野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール1973年石川県生まれ
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

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1件のコメント

neko
neko

2024年1月23日

はじめまして。私もキジバトに魅了されている一人です。今日も゙庭の木に雪の中、います。癒されますね🍀


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