1年目4月のおでかけポイント
No.01 新宿中央公園
環境:森林
最近、全国各地を飛び回って野鳥観察を楽しむ方が増え、ブログなどですばらしい写真などを掲載されています。しかし、それが原因で遠方へ行く機会がないとバードウォッチングは楽しくないのではと誤解をされることもあります。
そこでこの連載では、東京23区内のさまざまな場所を訪れて、100種の野鳥に出会うことを目標としました。公共交通機関が整備され、移動が便利ですので、関東近県の皆さんにも、地方の方が東京を訪問の際にも、この連載で紹介した場所には気軽に立ち寄れるのではないかと思います。参考になれば幸いです。
最初の訪問地は、東京らしい風景のなかでのバードウォッチングにしようと、新宿区から選ぶことにしました。
まだ一度も行ったことのない場所を求めて地図を眺めていて、ふと都庁横にまとまった緑を発見。名前は新宿中央公園。都営大江戸線都庁駅から歩いてすぐで、アクセスもよさそうですし、ネット上の映像で見るとこんもりとした森があるので、鳥がまったくいないということはないだろうと信じて、電車に乗り込みました。
公園の入り口につくと、都庁の高層ビルが森を見下ろすように建っています。
私の住む地域にはない高〜いビルに、都会に来たことを実感していると、さっそくハシブトガラスの声。新宿で最初に会った鳥は予想通りでした。
地面を見るとドバトが枝をくわえている姿があり、どこかで巣作りを始めている様子でした。
ドバトとハシブトガラスの出現に“23区らしさ”を感じながら園内を歩くと、シジュウカラがたくさん木々の間を飛び回っていました。
周辺に緑が少ないからここにシジュウカラが集中して棲んでいるのだろうかと考えましたが、それにしては数が多いように感じていて園内を調べると、巣箱を発見。やはり都会の緑の中でシジュウカラのような樹洞に巣を作る鳥の数が増えるためには、 少し人間の手助けが必要です。
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シジュウカラのさえずりに混じって、耳に心地よいきれいな鳥の歌声が木の高いところから聞こえてきました。春になると東南アジアの国々から繁殖のために日本の山間の渓流沿いに飛来するオオルリの声です。茂みに隠れているようでなかなか発見できなかったのですが、声の方向を探すこと5分、声の位置が何回か変わったときに、なんとか姿を捉えました。
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その後も姿を見る機会はありましたが、飛びながら虫を捕ったり、枝で羽づくろいをしたり、カラスの声に警戒する様子を観察できましたが写真に撮れるほどは一カ所にじっとしていないことが多くなり、スケッチをすることにしました。
このオオルリは、繁殖地に向かう途中にこの新宿中央公園に立ち寄ったのでしょう。思いがけない出会いに心がわくわく。センダイムシクイという夏鳥も声だけの確認ではありましたが、数回確認できました。都会の小さな緑にも、こんな鳥がやってくることに、ちょっと興奮してしまいました。
オオルリやセンダイムシクイのような渡り鳥も大切ですが、身近な野鳥との出会いも私には大事なこと。スズメとムクドリを探しました。
スズメは人の通りが多い園路にいて、その中には私に近づいてくるスズメもいました。
ひょっとしたら…と思って公園を歩くと、やはり餌をあげている人に出会いました。野鳥への餌やりは賛否両論がありますが、公園などでは餌やり禁止の立て札がなくても、バードウォッチャーとしては控えるのがルールだと思います。
都会の野鳥の代表選手、キジバトとムクドリも現れました。キジバトは道をノコノコと歩いているだけでしたが、ムクドリは枯れ草を集めていました。先に会ったドバトと同様、どこかで巣作りをしているようです。飛び去った方向を目で追いましたが、公園を出て彼方に行ってしまいました。
昼も近づくと、やはり鳥の様子が落ち着いてきて、ちょっとベンチで一休み。座って間もなく、私の廻りを1980年代から都市鳥に仲間入りしたハクセキレイが歩いてきました。
しかし、そんなのんびりもつかの間、カワラヒワの「キリキリコロロ、ビューン」という声が聞こえてきました。彼らの好む高い木のてっぺんを探すと、カワラヒワがいました。
今回のバードウォッチングでは写真撮影できなかったツバメやメジロを含め、全部で12種を確認。新宿でたった数時間の観察でしたが、思っていたよりも多くの鳥たちが利用している場所であることがわかりました。
新宿で時間に余裕ができたときは、新宿中央公園でちょっとバードウォッチングしてみてはいかがでしょうか。お勧めは春や秋など、渡り鳥たちが立ち寄るシーズンだと、今回のオオルリのようなちょっと嬉しい出会いも期待できてよいと思います。
お勧め機種
人通りも多い公園ですので、三脚付き望遠鏡ではなく、双眼鏡を持ってくるのがよいでしょう。出張などで本格的な双眼鏡が鞄に大きい場合は、コンパクトな小型双眼鏡も便利です。
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感動と発見をもっと近くに
野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)
プロフィール1973年石川県生まれ。 5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。 |