目次
自分に合った双眼鏡を選びたい!
バードウォッチングの際、双眼鏡があると、肉眼で眺めているのに比べて鳥の色やしぐさなどがよくわかります。私が野外で野鳥観察をしていて声をかけられたときに双眼鏡をお貸しして見てもらうことがあるのですが、皆さん「うわー、スズメって、双眼鏡で見るとこんなかわいい顔しているんですね!」と、驚かれます。双眼鏡の素晴らしさを初心者の方にも実感できる、いい機会だと思っています。
スズメの群れを双眼鏡で見ると、肉眼で見ていた時とは違う表情に気づくことができます。
しかし、いざ初心者が双眼鏡を買おうとカタログ冊子やネットで紹介されているスペック表を見ると、薄暮係数、ひとみ径、実視界、対物レンズ口径、アイレリーフ、最短合焦距離などなど、さまざまな「初めて知る言葉」のオンパレードです。バードウォッチングを始めた時に最初の悩みと言ってもいいのが、双眼鏡の選び方かもしれません。そこでここでは専門用語を使わずに自分に合った双眼鏡を選ぶ方法をご紹介します。
最初に決めておくこと
双眼鏡を選ぶ前に、とにかく決めておく必要があるのが、「安物は買わない」ということ。ホームセンターなどで無造作に置かれているようなものはレンズの品質が良くないですし、ちょっとしたことで壊れてしまうことが多々あります。鳥との出会いは一期一会です。その大切なチャンスで鳥の色や表情をしっかり観察するためにも、「ちゃんとしたものを買う」ことは最初に決めておくことをお勧めします。安物を買ってまた買い直し…は、本当にお金がもったいないです。最初に良いものを買っておけば、それを長く使うことができ、結果として出費は抑えられます。
様々な機種が販売されています
双眼鏡選びのポイントは3つ
専門用語を知らなくてもできる双眼鏡の選びでは、
- 重さ
- 倍率
- 価格
に注目します。
この3つを基に、購入したい機種を3つほどに絞り込み、後は取り扱いのあるお店へ実際に見に行ったり、観察会や探鳥会でベテランの方などにそれぞれの機種についてお聞きするのが良いと思います。ただし(私が良くやってしまうのですが)、自分の使っている双眼鏡の良さを語ってしまう場合が多いので話だけでは決めずに、自分の欲しいものを買うための情報収集をするようにしましょう。
観察会に参加すると、機種ごとの“生の声”を聞けるのがいいです
防水機能について
最近の双眼鏡は、防水機能がほぼ標準となっているので防水かどうかはそれほど心配する必要はないと思いますが、念のため購入前には確認しておきましょう。また、防水だからと言って、濡れた後にそのままにしておくのは禁物です。必ずタオルなどで拭いて早く乾かすようにしましょう。濡れたままケースに入れるのも双眼鏡の故障に繋がりますので絶対にやめましょう。
雨が降ると鳥の動きも鈍くなるので、小降りになるまで雨に直接当たらないようにするようにするだけでもいい。とにかく濡れたらそのままにしないことが大切
女性は軽さを重視
双眼鏡を首から一日ぶら下げると、肩が凝ったり、痛みを感じることがあります。女性では双眼鏡の重量が800gを超えると、1日持って歩くのは体の負担がかなり増してくるようですので、500gを基軸にして600gくらいを上限にされると良いでしょう。私事ですが、実母もバードウォッチングをしておりました。歳を重ねてからそれまでの双眼鏡が重く感じるようになり、200gくらいのもの(生産終了モデル)に買い換えたところ、改めてバードウォッチングに出かけるのが楽しくなったと言っておりました。小型で軽量の機種ではレンズが小さくなり、のぞいた時に暗く感じることが多いので、レンズの性能が良い高級なもの(定価で5万円以上が一つのライン)を選ぶほうが良いでしょう。
400g台が人気(画像はニコン・モナーク7)
成人男性ならば800g前後まで
成人男性では800gくらいまでの双眼鏡ならば1日普通に持ち歩いてもそれほど疲れないようです。私の愛用機種も700-800gのあいだですが、登山の時に600gくらいのものを選ぶとかなり体は楽になります。
レンズの明るさを追求した高性能双眼鏡では1kg以上のものがあります。例えばカワセミや猛禽類が飛んでくるのを1カ所でじっと待つなどスタイルであれば、その高性能を実感できると思います。歩き回るバードウォッチングでは、体力に自信のある方にお勧めします。首への負担を減らすために、肩からかけるものやたすき掛け式などのものに替えると良いでしょう。
ストラップを肩掛け型にするだけでも負担軽減になります
鳥を捉えやすいのは8倍
双眼鏡をほとんど使ったことがない方でも、バードウォッチングには6倍以上が良いと思います。私のお勧めは8倍です。肉眼で見えている風景と双眼鏡の捉えた場所の把握がしやすく、鳥を発見・観察するのに好都合です。10倍以上の双眼鏡は鳥を捉えるのが8倍に比べると難しくなる上に、手振れを感じやすくなるので、双眼鏡の使用経験を積んで必要性を感じるならば、購入を検討するので十分でしょう。私は小学生の時、最初に使っていたのは8倍で、3年後に10倍を買い、スムーズに倍率移行ができました。
「100倍ズームでこんなに見える!」や「驚きのオートフォーカス!」と宣伝しているものは残念ながらバードウォッチングには向かない機種ですので、最初から候補からは外しましょう。
双眼鏡性能は価格と比例
双眼鏡選びで、最終的に購入を決めるのは実はこの「価格」ではないでしょうか。野鳥雑誌編集部在籍時にさまざまな価格帯の双眼鏡を試した経験を踏まえて言えることは、「双眼鏡はお金をかけた分だけ、よく見える」ということです。そのため、最初に申し上げたように安物には絶対手を出さないで欲しいと思います。観察に必要な品質は、最低でも1万円以上のものが必須だと考えておいたほうが良いです。新品で販売価格が1〜2万円の場合でも、メーカー保証のある機種を選びましょう。ちなみに5000円以下のものだと、レンズ品質面からバードウォッチングに向いているものはありませんので、最初から選択肢には入れないことが大事です。
写真07 税別定価で11,000〜12,000円の手頃な値段で見え味が評判になっているコーワYFシリーズ。6倍という倍率のものもあり、入門にはもってこいの機種
やはりよく見える高性能レンズ双眼鏡
双眼鏡で価格を大きく左右するのは、レンズの性能です。価格差は、そのままレンズの品質や明るさ(≒対物レンズ直径)、視界の広さ、レンズコーティング(注1)などによるものです。この性能の差で非常に高価な機種が出ていて、ヨーロッパ製双眼鏡には、びっくりするような値段のものが見受けられます。同じような性能に思える機種であっても、実際に比べて見ると、レンズの明るさや画面のシャープ感、捉えている視界の広さに大きな違いがあり、その性能の違いは歴然です。ただ、それぞれの見え方(色の具合やアイカップによる視野の広さ)に、それぞれの人の好みが出るのも事実です。ネットのレビューだけではなく、観察会などの幹事さんなどにアドバイスを聞いたり、実際に覗かせてもらうなどして、慎重に選ぶ方が良いです。
注1:安い双眼鏡によくある「レンズが赤く見えるコーティング」には実際は効果が認められないので、購入候補から外すほうが良いです
形状による違いは慣れの部分が大きいので、まずはレンズ性能を優先した方がいいと思います
5〜10万円の価格帯に良い機種が多い
ヨーロッパの超高級双眼鏡と同等とは流石にいかないのですが、5〜10万円の機種になると、3万円クラスのものに比べて格段に性能も上がります。もし、バードウォッチングが生涯の趣味にできそうだと思えば、最初からこのクラスを検討すのが一番良いと個人的には思います。
最終的には、「欲しいと思った機種」を買うのがお買い得!
自分が欲しいと思った機種で、最後に迷った時は価格が多少オーバーしていても、欲しいと思ったほうを買うほうがいいでしょう。当初の予算が2万円くらいならば3万円くらいまで、5万円だったら頑張って8万円くらいまでの予算オーバーは許容にしておくほうが良いと思います。そのように申し上げるのは理由があります。
これまで私は双眼鏡を4台所有していますが、英国留学前に2台目から3台目の買い替え時で迷いに迷った挙句、お財布事情もあって安いほうを買いました。しかし、見え方に少しずつストレスを感じるようになり、結局3年後には候補にあった一番欲しかった機種に買い替えをしました。最初から欲しい機種を買っておけば余計な出費はせずに済んだのに…と後悔したことは、苦い思い出です。
クリスタルで有名なスワロフスキーですが、バードウォッチングの世界では光学機器メーカーとして知られています。価格帯は30万円台のものが主流で、野鳥観察が楽しくなる見え味は格別。
最終判断は実機に触れて
双眼鏡は高いお買い物です。できる限り、最終的には実機を見て決めることをお勧めします。手触りや重量感のほか、目のフィット感などは、カタログの数値とは違う感覚があります。特に重量感がボデイの重量バランスを考えて設計されたものの場合は、数値に比べて断然軽く感じるものがあります。触れてみないとわからないことがありますので、できる限り実物を確認する機会を設けてください。日本野鳥の会の各支部や博物館、自然公園などが開催している野鳥観察会に行くと、幹事やリーダーの方が双眼鏡を持っていますので、解説の邪魔にならないタイミングを見計らって見せてもらいましょう。
ドイツの高級双眼鏡の老舗、ツァイスの双眼鏡SFシリーズ。光の透過率92%という驚異のレンズで早朝や薄暮など厳しい条件でもしっかり野鳥を捉えます。
変わり種の双眼鏡、防振機能(手ぶれ補正機能)付きの双眼鏡について
手ぶれ補正機能付きの双眼鏡というものが発売されています。長い時間双眼鏡で観察していると、手ブレが大きくなることがあります。それを補正して「止まった画像」を提供してくれるのが、この双眼鏡です。電池で補正装置を作動させるために、普通のものに比べて大型であったり、重かったりするので、長距離を持ち歩くには、あまり向いていません。バードウォッチングを長く続けている方の中には、船に乗って長い時間海鳥を探したりするのに活用している方が多くみられますが、機種によっては電池の消耗が早いものがあるようです。また、防振機能で、船の揺れのように大きな揺れの抑制を目的に開発されたものや細かい揺れを抑制する機能は充実したものなどがあるので、自分に合ったものを選ぶのが良いでしょう。
おすすめの記事
初心者だからこそ楽しい!バードウォッチングを始めようすべての双眼鏡はこちら。
感動と発見をもっと近くに
野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)
プロフィール1973年石川県生まれ。 5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。 |
本サイトの掲載写真・イラスト・文章は許可のない転載、複製など固くお断りします。
すべての著作権を有しています。