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奇跡的に残った東京湾の自然、谷津干潟
東京湾の一番奥にある千葉県習志野市・谷津干潟。約40haのこの干潟は、1住宅地の中に突然干潟が出現するという、世界的にもちょっと変わった風景となっています。しかし、春と秋にはたくさんの渡り鳥が立ち寄る貴重な環境であり、渡り鳥の貴重な生息地として、1993年に世界的に重要な水鳥の生息地を保護するための条約であるラムサール条約の登録湿地となりました。自然観察センターがあり、初心者が手ぶらで訪問してもバードウォッチングが楽しめる場所になっています。初めて谷津干潟を訪問するときは、入館料がかかりますが、谷津干潟自然観察センターへまず行き、鳥の観察の仕方や情報収集をするのが良いでしょう(注:休館日あり)。
アクセス
京成谷津駅から徒歩約30分
JR京葉線新習志野駅・南船橋駅から徒歩約20分
JR総武線「津田沼駅」南口バスのりばから「谷津干潟行き」に乗車。終点「谷津干潟」を下車、徒歩約15分
JR総武線「津田沼駅」南口バスのりばから「新習志野駅行き」に乗車。「津田沼高校」を下車、徒歩約10分
狙い目は満潮から干潮へ向かう時間
谷津干潟の見所は、何と言っても長距離を渡るシギやチドリの仲間の観察です。春(4-5月)と秋(8-9月)にはたくさんの鳥たちが訪れます。干潟が現れる時間に行くのが良いのですが、谷津干潟は海とはたった2本の細い水路でつながっているだけなので、東京湾より1-2時間ずれて干満が起きます。訪問時にはご注意ください。
鳥が干潟に多くやってくるのは、干潮時ですが、完全に干潟が出てしまう時間になると、干潟全体に鳥が散らばってしまい、鳥を探すのが大変になります。
そこでお勧めは、干潮から満潮になる時間です。干潟に散らばっていた鳥たちが潮が満ちてくるとともに水際を移動してくるために、数が集中する上に近づいてくるのです。
双眼鏡で鳥の姿を探し、見つけたら望遠鏡で観察しよう
干潟は森の中などと異なり、途中に遮るものが少ないので、鳥の姿は確認しやすいですが、鳥との距離は双眼鏡では少し遠いことがありますので、ぜひ望遠鏡を持っていきましょう。もしまだ手元にない場合は、自然観察センターへいきましょう。中に来館者が自由に使える望遠鏡があります。混雑しているときは、ある程度使ったら、他の人に譲ることも忘れずに。みんなが楽しい時間になることを考えて行動をしましょう。
まずはセイタカシギを探そう
谷津干潟に来たら、セイタカシギを探しましょう。昔は珍しい鳥でしたが、1980年代から日本国内で記録が増え始め、谷津干潟では現在一年中観察できる鳥になっています。白黒の体に赤い足で、非常にきれいな鳥です。干潟にいるときに非常に目立つので、バードウォッチングの初心者にも見つけやすい鳥です。ケッケッと大きな声で鳴くので、その声でも存在を確認しやすい鳥です。
見つけやすいダイゼン
セイタカシギの次に谷津干潟で見つけやすいのは、ダイゼンです。大きさは29cmでハトくらい。チドリとしては大型で谷津干潟では数の多い鳥の一つなので、干潟を見回したときに、初心者の方でも目に付きやすいのです。谷津干潟では越冬している鳥でもあり、8月中旬以降に繁殖地からやってくる姿が見られます。ゆっくりと数歩歩いては止まり、数歩歩いては止まるという動作を繰り返し、時々泥の上をつついてゴカイなど干潟の小動物を捕まえて食べています。夏羽では顔から胸、腹にかけて黒いので、8-9月だとまだその黒い羽が残っているものが見られますので、その羽をもつダイゼンを探すのも楽しいものです。
嘴が下に曲がっているチュウシャクシギ
バードウォッチングの初心者にとって下に嘴が大きく曲がっているチュウシャクシギは観察が楽しい種類の一つです。この特徴的な嘴でカニを捕まえて食べていますが、全部は食べません。カニのどこをどうやって取るのか、じっくり観察してみましょう。そのほかにも、仲間同士での争いなどもよく見られるので、行動観察が好きな私にはとてもありがたい鳥です。「ポピピピピ…」と通る声でよく鳴くので、英語でチュウシャクシギのことをセブン・ホイッスル(7回笛を吹くように鳴く鳥)と呼ぶこともあります。
「名前そのまま」のシギたち
シギの仲間は脚の色に特徴があるものが多く、名前がそのままのものがいくつかいます。その中でもよく観察できるのがキアシシギです。体全体は地味な色ですが、脚の黄色が目立ちます。谷津干潟では壁に近い岩がゴロゴロしたところにもやってくるので、比較的近くで観察できるシギです。
次に見つけたいのは、アオアシシギです。
キアシシギが直線的な嘴をしているのに対し、アオアシシギではわずかに上に反っていて、根元が少し青灰色なのが特徴です。水面が脚の付け根まであるような深いところを走り回って魚を追いかけている様子を観察できることもあります。よく鳴くシギで、涼しげに「キョーキョキョー」という声を聞くと、シギの渡りの季節になったことを実感します。
最後はアカアシシギです。アオアシシギやキアシシギに比べると数が少なく、見られる機会も少ないのですが、東京湾内で観察されているので、谷津干潟で見られる可能性があります。私はカメラを持っていないときに出会うことが多く、写真のアカアシシギは2005年に休耕田で撮影したものです。
小形のシギ・チドリ類は難しい
初心者に限らず、ベテランのバードウォッチャーでも見分けが難しいのが、小形のシギやチドリです。見分けに困る一番の理由は、みんな似ているような色や形であり、それでいて、ちょこまかと動き回ること。識別点の確認が難しいのです。ですから、もし小さいシギやチドリを見つけて図鑑とにらめっこして種類がわからなくても、何も問題はありません。
ちなみに以下の写真で違いがわかるでしょうか?私は鳥を見始めてまもない頃はチンプンカンプンでした。
ちなみにコチドリとシロチドリの注目点としては、目の周りに黄色いリングがあるかどうかや脚の色、トウネンとハマシギでは、嘴の長さや太さ、お腹に黒い点の有無などです。実際は動き回ったりしてこれらのポイントを確認するのは難しいことが多々あります。苦手だなと感じたら、見分けはひとまず置いておいて、餌を食べる様子などを見て楽しみましょう。
コチドリ
シロチドリ
トウネン
ハマシギ
シギチドリ以外の鳥たちも
シギチドリ類だけではなく、谷津干潟にはたくさんの鳥がいます。カワウやカルガモ、アオサギ、ダイサギなどもいます。シギチドリが広い干潟の中では小さく見えるので、時々はこれらの大形の鳥たちの観察をしてみるのも気分転換になって良いでしょう。私は谷津干潟ではカワウが大きなウナギと格闘しているシーンを何度か観察して楽しかったです。
カワウとカルガモ
アオサギとセイタカシギ
コサギ
ウナギを捕まえたカワウ
様々な野鳥たちがいる谷津干潟。観察舎もあるので、日差しが強い時などはそちらで涼みながら観察もできるので、オススメのバードウォッチングスポットですぜひ一度足を運んでみてください。
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感動と発見をもっと近くに
野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)
プロフィール1973年石川県生まれ。 5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。 |
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佐藤伸朗
2023年8月17日
本日、地元での撮影時に、何処からともなく、小さな野鳥が、飛んで来まして、浜辺に居りて
さざ波の打ち上げる海藻の中に嘴を入れて、何かを啄んで居りました、、、でも、動きが速くって、撮影が今一つかな出したが、其れなりに、撮影は成功かな出した。