神戸宇孝さんの「らくらくバードウォッチング」No.10 駒場野公園

神戸宇孝さんの「らくらくバードウォッチング」No.10 駒場野公園

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1年目1月のおでかけポイント

No.10 駒場野公園

環境:池 森林

この連載を始めてから、都内を電車で移動するときにはなるべく窓側にいるようにしています。大きな木々が見えるとそこに思いがけず大きな神社があることがわかったり、川を渡るときはカモなどの水辺の鳥がいないか、短い時間でも探すのが楽しいです。書店で小さな地図本がもうボロボロになってしまいました。

用事があって京王電鉄・井の頭線(吉祥寺〜渋谷)に乗ったときのこと。ドア付近に立ちながらいつものように緑を目で追っていると、一瞬田圃が目に入りました。都心に田圃があるとは思えず、地図を見ると田圃があった付近は『駒場野公園』とあります。それほど大きくない公園のようですが、どんな鳥がいるのか気になり、1月に出かけてみることにしました。

公園を入ってすぐ左手に見える田圃には、「ケルネル田圃」という名称がついていました。駒場野公園は明治政府の近代農業指導者育成のために駒場野農学校跡地で、この水田はこの実験を行った場所。ドイツ人ケルネル氏が教師として着任した経緯もあり、そのような名前が付けられているとのこと。現在は筑波大学付属駒場中・高校の生徒さんによって稲作が行われているそうです。小さな田圃ですが歴史のある場所でのバードウォッチングは、先人たちに失礼のないようにしないといけません。

公園の奥に入っていくと、田圃に水を注ぐ池に着きました。都会の鳥たちにとって水の確保は重要なので、静かに鳥の飛来を待つと、キジバトが水を飲みにやってきました。

キジバトが去ると、次に尾の長い小鳥が舞い降りてきました。尾の付け根が黄色いので、キセキレイです。この連載が始まってから初の確認。やりました!

キセキレイで幸先のいいスタートにニコニコしていると、メジロやシジュウカラ、そしてコゲラがその喜びに賛同してくれているかのように次々とやってきました。

 

小鳥たちの声でにわかに賑やかになった駒場野公園。さらに耳を澄ますと、チャ、チャ、と舌打ちをするかのような声が藪の中から聞こえてきます。初出現のウグイスです。

 

シジュウカラとメジロの声の中に、ジュルルルと少し濁った声が混じるようになりました。声の方向を探すと、フワフワの頭に小さい目がかわいいエナガがいました。この鳥もこの連載が始まってからは初めての観察です。

いろいろな鳥を一気に見てしまい、一息つきたいとベンチを探していると、また目の前を飛び去る鳥の姿が。飛び去った方向を探すと、前回も現れたシロハラを発見。

シロハラがいれば、ツグミもいるのではと探すと、やはりいました。でもツグミは明るい陽射しの中。同じツグミの仲間ですが、好む環境の違いをしっかり確認できました。

シロハラとツグミを観察し、今度こそ一息と思うと、常緑樹の中に何か動く鳥影を見つけました。今度は何?と探すと、なんとアカハラでした。この個体は頭の黒く、伊豆諸島などに生息するアカコッコという珍しい鳥に見間違えてしまいそうですが、図鑑を見ると頭部の黒さがアカコッコにしては淡いので、オオアカハラという亜種だと思います。

 

アカハラの観察後は、しばらく鳥の出現が落ち着き、ようやくのんびりとお茶を飲むことができました。そこから歩き始めてすぐ、木の実を食べるオナガを楽しみました。

 

充実したバードウォチングに満足していたのに、最後に大サービスのモズが現れました。かわいい顔をしていますが、嘴が鉤状になっているように肉食。主に虫を食べるのですが、餌の少ない時期は小鳥なども襲うので、急に小鳥たちの声がしなくなってしまいました。

 

モズはとてものんびりしていたので、距離を置いて角度を変えてスケッチもできました。

 

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予想外に多くの鳥たちに会えた駒場野公園。新しく観察できた種類も5種類となりました。来月も多くの鳥に出会えることを祈りながら、また井の頭線に乗り込みました。

 

お勧め機種
駒場野公園では、常緑樹の多いエリアもあるので、EDレンズ採用の明るいレンズを搭載した双眼鏡がお勧め。しかし、駅からも近い公園で気軽に訪れたい場所でもあるので、鞄の形を大きく変えない小型のオーロスシリーズを片手にふらりと訪問するのもいいでしょう。

 

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 神戸宇考 野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール1973年石川県生まれ
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

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