第2回 街の中の川で野鳥を探そう!

第2回 街の中の川で野鳥を探そう!

第2回 街の中の川で野鳥を探そう!


 野鳥画家 神戸宇孝さんの新連載の第2回

 

はじめに


 バンガードのサイトを閲覧の皆さん、こんにちは。鳥類画家の神戸宇孝です。前回は街の中の電線に注目して、「ものさし鳥」をしっかりと覚えることをお伝えしました。ものさし鳥の大きさや動きが皆さんの目に馴染み、鳥の存在が身近になってきたと思います。そこで、「ものさし鳥以外の鳥の存在に気づくコツ」を掴むために、今回は別の環境に注目してステップアップしてみましょう。

 

水質改善が進んだ街の中の川


 私が本格的に鳥を見始めた1980年代は、自宅のそばを流れる川幅の狭い川では水底にヘドロが溜まり、川面にはたくさんの泡が浮いていて、鳥の姿はごくわずかでした。しかし、最近は水質も改善され、さまざまな鳥を見る機会が増え、野鳥観察の初心者にはオススメの環境の一つとなりました。  車を注意しなくて良い歩道が川沿いにあり、目の高さよりもフェンスが低いと良いですが、自宅から気軽に足を運べる安全な場所があれば、それが一番です。まずは鳥を観察する機会を増やすことが重要です。

少し草が生えていたり、浅瀬があると鳥にとって利用しやすい

 少し草が生えていたり、浅瀬があると鳥にとって利用しやすい

サギの仲間を2種類見つけよう


 前回お話しした「ものさし鳥」の中で一番大きいハシブトガラスで56cmですが、街の中を流れる川には、それよりも大きな鳥がいます。まず見つけていただきたいのが、双眼鏡がなくても姿を確認できて一年中日本で見られる大きなサギの仲間、アオサギです。

アオサギ 体長93cm

 アオサギ 体長93cm

 全体的に青っぽい灰色で、頭と翼の一部に濃い青(光の具合によって、藍色や黒にも見える)があります。最近は人の姿を見てもあまり逃げない個体もいて、比較的近くで観察できるようになりました。実はこの鳥、宮崎駿さんの2023年公開の長編映画『君たちはどう生きるか』に出てくるキャラクターに採用され、一躍有名になりました。

 水の中や水際でじっとして、近づいてくる魚などを待っていることが多く、驚かさないようにしてみていると、じっくり観察できます。歩くスピードは非常にゆっくりですが、獲物を捕らえる時は素早く一瞬です。その速さの違いを見るのも楽しいです。

 アオサギを見つけることができたら、次はコサギを探しましょう。

コサギは、こんな感じで見つけられると思います
コサギは、こんな感じで見つけられると思います

カラスくらいの大きさで全身が白いので、遠方からでも見つけやすい鳥です。

コサギ 体長60cm

 コサギ 体長60cm

 コサギの餌の獲り方は、アオサギと大きな違いがあります。先ほどアオサギはじっと獲物が近づいてくるのを待つと紹介しましたが、コサギは歩き回って、水草の中や石の隙間などに潜む魚やエビなどの小動物を、脚を震わせて追い出して捕まえるという大変特徴的な行動をします。脚の指が黄色いのも、この色に魚などが驚くので、より効果的に獲物を追い出せるからであろうと言われています。私の撮影した動画のリンクを以下に紹介します。

 

コサギ採餌行動


 

ハクセキレイとセグロセキレイ


 次に見つけたいのが、体がスズメよりもひと回り大きいくらいのサイズで、白黒模様のハクセキレイです。

ハクセキレイ体長21cmの河原にいる画像

ハクセキレイ体長21cm

 ハクセキレイは尾を上下に振りながら歩く姿が特徴的な都会で普通に見られる鳥です。一年中見られますが、秋から冬に数が増える傾向にあります。以前は人を警戒する鳥でしたが、最近はコンビニエンスストアの駐車場で人に近寄ってくることも増えています。足元で見られることから一般の人にも注目をされるようで、ネットでは「白黒の鳥 駐車場 逃げない鳥」などでよく検索されています。

 ハクセキレイに似ていますが、顔の黒い範囲がハクセキレイよりも多いセグロセキレイという鳥がいます。ハクセキレイよりも見られる機会は少ないのですが、街の中の川にも生息しているため、見つけたハクセキレイを一つずつ丁寧に確認していくと、きっと見つかるでしょう。ハクセキレイのように人に積極的に近づくことは、現時点ではしていないようです。

セグロセキレイ体長21cmが河原にいる風景

セグロセキレイ体長21cm

 セグロセキレイはつがいで行動していることが多く、一羽を見つけるとだいたいもう一羽がそばにいます。水辺を歩きながら鳴いていることが多く、ハクセキレイよりも少し濁った声で互いに鳴き合いながら、付かず離れず行動している様子がよく見られます。雌雄ほぼ同色ですが、雄の背中は雌に比べると黒色がしっかり濃いという違いがあります。

 実はこのセグロセキレイ、日本では普通に観察できる鳥なのですが、地球上では日本を中心にしか生息していない世界的には珍しい鳥です。海外から日本に来たバードウォッチャーが見たい鳥の一つで、私の友人のイギリス人バードウォッチャーが来日した際は、セグロセキレイを見たときに大興奮していました。

 

水面を泳ぐ鳥


 次は水面を泳ぐ鳥に注目しましょう。街の中の川でも普通に見られるのは、カルガモとカワウです。

カルガモ体長60cmが川を泳いでいる風景

カルガモ 体長60cm

カワウ体長82cmが川を泳いでいる様子

カワウ 体長82cm

 水面に浮いているという習性はよく似ていますが、カモ科とウ科という、分類では違いがあります。カルガモは体の半分が水面より上に出ていて尾羽が水面よりも上に出ていますが、カワウは胴体がカルガモよりも水に沈んで尾羽が水面に付いています。この2種のシルエットの違いを目に焼き付けておくと、水面を泳ぐ鳥の識別の力がつきます。

 

電線に止まれるカワウ


 カワウは電線に止まることができます。鳥が電線に止まれるのは当たり前と思われるかもしれませんが、日本で確認されているカモで電線に止まる姿が確認されているのはオシドリだけなのです。

電線に止まるカワウの風景

電線に止まるカワウ

 

カワセミはどこ?


 川沿いを自分の野鳥観察ルートに選んだときに出会いたい鳥の一つがカワセミです。スズメくらいの大きさで、水面に突き出た枝などに止まり、そこから水中に飛び込んで魚を捕らえます。

カワセミ 体長17cm 河原のカワセミ

カワセミ 体長17cm

 私は初めて図鑑でカワセミのコバルトブルーを見たときは、こんなきれいな鳥がいるのかと心を奪われました。そして「こんなきれいな色を見逃すはずがない」と思いましたが、一人で実際に川沿いを歩くと見つけにくいことに驚きました。私がよく行く街の中の川で、発見が遅かったカワセミの画像をご覧ください。以下の写真のどこにいるか、わかりますか?

川に泳いでいるカルガモとカワセミ

カルガモを先に観察して、あとでカワセミに気づきました

意外に水面から離れたところにいて、発見が遅くなりました

意外に水面から離れたところにいて、発見が遅くなりました

野鳥のいる川の風景

これは難しかったです

 川にカワセミがいるかどうかは、糞の痕跡で確認できます。カワセミは糞をするとき、短い尾羽をあげてピューっと後方へ飛ばすので、以下の画像のような状態になります。この痕跡のある場所を定期的に見て回り、皆さんが1日も早くカワセミに出会えることを祈っております!

河原にカワセミが居た痕跡の画像

白線を引いたような細長い痕跡になります

カワセミがいる痕跡で壁が汚れている

カワセミの止まる高さの壁面部分が糞で白い

 

いろいろな鳥たちが利用する街の中の川


 今回、街の中の川で見られる鳥として紹介した種はごく一部です。これらの鳥を観察することで、他の鳥たちの存在に気づくこともあるでしょう。前回紹介した「ものさし鳥」の一つであるムクドリは、街の中の川の浅瀬に群れで飛来して水浴びをよくしていますし、冬には北国からやってきたコガモやマガモなどに加え、夏の間は山の上にいたキセキレイにも会えるでしょう。コサギよりも大きい白いサギがいたら、それはダイサギの可能性が一番高いと思います。最近では街の中に進出してきているイソヒヨドリも観察できる機会が増えています。いろいろな鳥に会える街の中の川を、ぜひ探索してみてください。

川にいるセグロセキレイとコガモの風景

セグロセキレイ(左)とコガモ。よく動くセキレイを双眼鏡で追っていると、この寝ているコガモのように、他の鳥に気がつくこともあります

川辺にいるキセキレイの風景画像

キセキレイ

川辺のダイサギ、アオサギのようにゆっくり歩きます

ダイサギはコサギよりも大きく、アオサギのようにゆっくり歩きます

イソヒヨドリ。

イソヒヨドリ。この鳥は体の所々に縞模様があるので、若い雄です

 

カワセミはどこ?の解答


カルガモとカワセミ

カルガモについ目がいってしまいますが、右上にいます

良い止まり場がないと、水面からずいぶんと高い場所にも止まります。このときはガードレールに止まっていました

日陰のカワセミは、目立ちにくくて見つけにくいです

 

次回は、河原のある大きな河川での観察ポイントを紹介します。


 

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 神戸宇孝 野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール1973年石川県生まれ
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる.CWニコル氏のものの環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて出される。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

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