第3回 大きな河川でバードウォッチング!
はじめに
バンガードのサイトを閲覧の皆さん、こんにちは。鳥類画家の神戸宇孝です。私は幼稚園の頃に野鳥観察に興味を持ちました。 長年、鳥に会うためにどのようにすれば良いか?を考えて生きてきたせいか、鳥の探し方や見分け方について質問をよく受けます。 慣れてしまえば実際には難しくはないのですが(ズボラな私でもできる!)、それがビギナーの皆さんにとって役立つ情報とのことで、2年間で8回の連載を通して、 環境別にバードウォッチングが上達する方法を紹介していきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
飛んでいる鳥を双眼鏡で捉える訓練に最適な場所
前回までの連載で、目が鳥の存在と動きに慣れてきて、止まっている鳥を双眼鏡に入れることがスムーズになった次にハードルとなるのは、「飛んでいる鳥を双眼鏡で捉える」ではないでしょうか。私自身も野鳥を見始めてすぐの頃、双眼鏡で飛んでいる鳥を捉えることができなかったので観察したい鳥を逃してしまうことばかりで、とても悔しい思いをしました。観察会に行っても「これは慣れるしかない」というアドバイスしか受けられず、なかなか使い方を上達できなかった思い出があります。そこで使い方の練習場所として思いついたのが、以下の2点が確保できる場所です。
- 視界が広い
- 飛ぶスピードが遅い大きな鳥がいる
そんな場所として紹介するのが、河原などもある幅の広い大きな河川です。鳥との距離は遠くなってしまうこともありますが、街の中の河川よりも自然が残されていることが多いので、実際はこれまでとは様々な鳥に会える機会も多い場所の一つ。特に冬場は北国から渡ってきた鳥たちがたくさん飛来する環境です。
大きな河川沿いの遊歩道などを利用しよう
浅瀬や流れの速さにバリエーションがあるといろいろな鳥が利用している。特に冬場はいろんな鳥がいるので、気軽に行かれる距離にあれば自分のフィールドにしておこう
羽ばたきの飛行スピードもゆっくり。アオサギを見よう!
双眼鏡で捉えやすい「ゆっくり飛んでいる鳥」で、最初に紹介したいのがアオサギです。
アオサギ
全身が青灰色のサギの仲間です。日本で記録のあるサギでは最大級で、羽ばたきも飛翔速度もゆっくりですので、捉えやすいでしょう。コツとしては、「しっかり肉眼で飛行方向と速度を保って見続け、そのまま双眼鏡を充てる」ことです。双眼鏡を覗く際に目や頭を固定してしまうと移動分の差が生じてしまい、双眼鏡に入りません。覗いてから双眼鏡を動かすと、闇雲になってしまうので、かえって鳥が双眼鏡に入らなくなります。
アオサギがうまく捉えられるようになったら、次はトビを探しましょう。
トビ
トビはタカの仲間の鳥で、アオサギよりは飛び方が少し複雑になります。上空で輪を描くように飛んだり、風を利用して飛行速度が変化します。また、時折急降下などをしますので、アオサギよりイレギュラーな動きに対応できるようにしましょう。アオサギを捉えるよりかは少しコツが必要ですが、体や翼は大きいので、双眼鏡に入ってしまえば、追跡はしやすいでしょう。
上の画像のトビと尾羽の形を比較して、広げた時と閉じた時の違いを覚えておきましょう
余談ですが、トビは尾羽を広げるとお好み焼きのヘラのようになり、2cの画像のように少し閉じた状態になると、真ん中が凹んだ形になります。この形をしっかり覚えておくと、今後ワシやタカの猛禽類の見分けに大変役立ちます。
アオサギとトビを捉えるのがスムーズになったら、カワウに挑戦してみましょう。カワウは体重が重いので急に方向を変えることが少なく、速さを変えずに直線的に飛ぶことが多い鳥です。カワウの飛行スピードに合わせて進行方向の少し前に双眼鏡の覗いた場所が来るようにできると良いでしょう。その水平移動のスピードを保ちながら目で追い、そのまま双眼鏡を目に充てるイメージで試してみてください。
体重が重いカワウはアオサギやトビよりも飛行スピードが速いことが多いです
最初はうまく入らない場合もありますが、カワウは大きな川には普通に生息している鳥なので、チャンスがたくさんあります。何度でもトライしましょう。また、カワウは群れで飛翔することも多いので、そんなシーンに出会ったら「群れのどれでも良いから双眼鏡に入るようにする」という経験を積んでいくのも良い練習になります。
トビ以外の猛禽類を探してみよう!
飛んでいる鳥を双眼鏡で捉えることに慣れてきたら、せっかくなのでトビ以外の猛禽類を見つけることに挑戦してみましょう。トビと大きさが近いミサゴという魚と主食とする白くて美しい鳥が大きな河川には生息しています。以前は見るのは難しい鳥でしたが、近年は数が増えつつあり、ダム湖や大きな河川、海岸で見ることは珍しくなくなってきました。色だけではなく、尾羽先端部分の形、滑空している時の翼の保ち方などに注目して見ましょう。
体や翼が白っぽく見えるミサゴ
ヘリコプターのようにホバリングをするチョウゲンボウ
大きな川の河原で見られる猛禽類でもう一つ代表的なのは、チョウゲンボウです。ハトくらいの大きさのハヤブサの仲間で、街の中の高い建物や川にかかる大きな橋の橋脚も営巣場所に利用することで、人工的な環境にも適応している鳥の一つです。普段はヒラヒラとした羽ばたきですが、獲物を見つけた後の急降下はスピードが速いので、見失わないようにしっかり追いましょう。
草むらの中にいるネズミなどの小動物に狙いを定めるために空中で一点に止まって飛翔しています
飛翔するカルガモにも挑戦してみよう
いろんな鳥を双眼鏡で捉えられるようになって、カワウ同様に直線的に飛翔するカルガモはそんなに難しくないと思うかもしれませんが、身体がカワウよりも小さく、飛翔スピードも速いカルガモは、カワウよりも飛行コースが変化に富み、思っているより難しいものです。慣れてきたら、翼の上面にある翼鏡(よくきょう)が何色に見えるかなども見てみましょう。
日本に一年中生息するカルガモは、飛んでいる鳥を双眼鏡に捉える訓練にもってこいです
ここで一息、止まっている鳥たちにも注目してみましょう
これまで飛んでいる鳥を双眼鏡で捉える方法ばかり紹介してきましたので、ここで一息、河原や周辺の草地や樹林にいる鳥を紹介します。
初夏のヨシ原で大きな声で「ギョギョシ、ギョギョシ、ケッケケッケ」などと騒がしく鳴いている姿が見られるのは、オオヨシキリです。褐色の地味な色ですが、口の中が真っ赤で非常に目立ちます。
口の中が赤いオオヨシキリ
白いツバメのようなコアジサシ
近年は減少してなかなか姿を見ることが難しくなりつつあるのですが、ぜひ石がゴロゴロしている広い河原がある場所で探して欲しい鳥が、夏の間に見られるコアジサシです。
水の中で勢いよくダイビングして魚を捕らえます
群れで生息するコアジサシ
ゆっくりした羽ばたきで水面の上を飛び回り、魚を見つけると急降下してダイビングします。非常に美しい姿で人気が高いのですが、河原や砂浜に卵を直接産んで子育てをするので、河原のレジャーで人の立ち入りが多くなると繁殖地が撹乱されてしまい、途中で卵を放棄せざるを得なくなったり、人が出したゴミにカラスが寄ってきて雛が食べられてしまたりして、失敗してしまいます。小さな命を守るために、人間ができることはしていきたいものです。
秋にはモズを探そう
秋になると、縄張りを確保するために河原沿いの木々の頂にモズが見られます。「ギチギチギチ…、ギョン、ギョン」などと大きな声で鳴いています。声が遠くても、周囲を見渡せるような高い木や双眼鏡で確認すると、きっと姿を見つけることができるでしょう。
高い木で鳴くモズは見つけやすい鳥の一つ
のんびりバードウォッチングができる広い河川
インドへバードウォッチングに行ったときのこと。河原に椅子を並べてサギのコロニーを眺めながら、お友達や家族と雑談をしている人がたくさんいました。「あの木の左から3番目の巣のつがいは、子育てが上手なんだよ」と教えてくれたインドの人の言葉に、衝撃を受けたのをよく覚えています。鳥の見方が1日にいかに見るかを成果としていた自分は、鳥のことをよく知っていると思っていたのですが、一つの鳥をじっくり見る(観るという字が正しいでしょうね)おもしろさを教えてもらったような気がしました。以来、河原の土手に座って、のんびりバードウォッチングを時々楽しんでいる私です。皆さんも、試してみてはいかがですか?結構、良いものですよ。
大きな魚を捕らえたアオサギ。飲み込むまで、のんびり観察を楽しみました(結局飲み込めず、捨てて飛び去っていきました)。
次回は、田畑での観察ポイントを紹介します。
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