第6回 シギチドリの識別に挑戦しよう

第6回 シギチドリの識別に挑戦しよう

第6回 シギチドリの識別に挑戦しよう


 野鳥画家 神戸宇孝さんの新連載の第6回

 

はじめに


 バンガードのサイトを閲覧の皆さん、こんにちは。鳥類画家の神戸宇孝です。私は幼稚園の頃に野鳥観察に興味を持ちました。 長年、鳥に会うためにどのようにすれば良いか?を考えて生きてきたせいか、鳥の探し方や見分け方について質問をよく受けます。 慣れてしまえば実際には難しくはないのですが(ズボラな私でもできる!)、それがビギナーの皆さんにとって役立つ情報とのことで、2年間で8回の連載を通して、 環境別にバードウォッチングが上達する方法を紹介していきたいと思います。

 

よろしくお願いいたします。

 

ベテランも悩む!?シギチドリの見分け


 前回同様、連載で解説してきた自分で鳥を見分けることにぜひ挑戦していただきたいと思います。ポイントは前回のカモメ同様になのですが、カモメ類以上によく似ている種が多いことに加え、素早く動く鳥で識別ポイントが確認しにくいことが難易度を上げています。図鑑には飛翔中の識別点が書いていますが、まずは地上にいるときの特徴で見分けられるスキルを磨きましょう。大事なことは基本的なポイントを一つずつ丁寧に確認していくことです。

 

シギチドリ類の代表的な生息環境の風景である干潟と休耕田

 

まずはシギ1種、チドリ1種を一つずつしっかりと覚えよう


 シギチドリの仲間は、種類が多く、色彩も非常に似ていますので、まずは以下に紹介する2種を徹底的に目に焼き付けましょう。

 シギで最初にしっかり覚えたいのは、体長20cmほどの「イソシギ」です。

 

日本全国に周年生息しているイソシギ

 

 体長24cmのムクドリよりも小さく、ムクドリよりも体が細長く見えます。干潟や海岸、河口、河川など生息している環境が幅広い上に日本全国に分布しています。また他のシギ類が春秋の渡りの時期に見られるのに対し、イソシギは日本で通年観察ができるので、いつでもどこでも見分けのトレーニングができます。イソシギの特徴はたたんだ翼の前方にグッと食い込むように白い線が入ることです。

翼前方に白が食い込むように入る

 

 チドリで最初にしっかり覚えたいのは、全長16cmほどの「コチドリ」です。体長14.5cmのスズメより、少し大きいくらいで、イソシギのように様々な水辺環境に適応しています。春から夏にかけては石のゴロゴロした河原や造成地などで繁殖し、秋には休耕田や干潟に群れでいることが多いチドリです。

コチドリの夏羽

 

見分けの難易度が上げる理由


 以下の写真をご覧ください。

 

これもコチドリ

 

 ここで話を少しややこしくしてくるのが、冬羽や若鳥の存在です。上のコチドリの写真では、夏羽よりも顔の白黒がはっきりしていません。同種で、季節や年齢によって羽色が変わるうえにそのバリエーションが非常に多く、さらにはそれに似ている別種のシギチドリが同環境にいるのです。これがシギチドリの見分けを難しくしている理由の一つです。

 

最初は「イソシギ」「コチドリ」と違うことに自分で気づけるようになろう


 下の写真はキアシシギです。日本に春と秋に渡ってくるシギですが、イソシギとの違いを3つ挙げてみましょう。

イソシギとの違いは?

 

1. 脚が黄色
2. たたんだ翼の前方にグッと食い込むように白い線がない
3. 頭の大きさに対して、イソシギよりも嘴が長い

などがまず挙げられます。そのほかには、

嘴と眼の間の黒い部分が太い
背中の灰色部分にキアシシギは黒い模様が入らない
胸の模様がキアシシギはザクザクした模様

などもあります。実際の野外での観察では、大きさや声なども参考になりますが、最初は2-3ヶ所、そしてその数が少しずつ増やしていけるようにしていきましょう。

イソシギ

 

 それでは次にチドリで挑戦しましょう。下の写真はシロチドリ雄です。少し難易度をあげて、コチドリの冬羽や若鳥との違いを3つ挙げてみましょう。

 

コチドリとの違いは?

 

1. 目の周りが黄色くない
2. 脚の色が黄色くない
3. 体の大きさに比べ、頭が大きい

などの点が挙げられます。特に3の特徴に気づくには、コチドリの観察経験がとても重要で、観察条件の厳しい時(逆光や少し遠くて色がわかりにくい、など)に実はすごく役立ちます。鳥との出会いは、図鑑の写真やイラストのように好条件のほうが少ないのが常です。観察しやすいコチドリを「いつでも見られる鳥だから見なくてイイヤ」といって観察時間を減らしてしまうと、シロチドリの存在に気づけず、出会いの機会を逃してしまいます。私の過去にこのような失敗をたくさんしてきています。

 

コチドリより頭が大きく見えることが私の目に残っていたので発見できたシロチドリ(冬羽)。当初は逆光方向にいて「コチドリとは違うな」と観察を続け、徐々に順光方向に来てじっくり観察できた

嘴に注目


 イソシギやキアシシギのよく似ているシギにソリハシシギがいます。脚が黄色なので、イソシギとは慣れればすぐに見分けられますが、キアシシギとは見間違えてしまいそうです。そこでキーポイントになるのが、名前の由来にもなっている「反った嘴」です。

ソリハシシギ

 

 シギの仲間は嘴の形がチドリよりもバリエーションがあります。チュウシャクシギはその良い例で、ソリハシシギとは逆に下向きに曲がっている長い嘴をもっています。

チュウシャクシギ

 

 アオアシシギの嘴は一見まっすぐに見えるのですが、やや上向きに反っています。

アオアシシギ

 

  嘴はその鳥の食性と密接な関係にありますので、以上の鳥に出会ったとき、どのような生き物をどのように採っているかをぜひ確かめてみてください。

見過ぎないことも上達のコツの一つかも?


 シギチドリに限ったことではないですが、似ている鳥の見分けでは壁に当たることも多々あります。私の場合、シギの場合でそれは「タカブシギ」と「クサシギ」でした。この2種は背中の白斑の大きさの違いが見分けのポイントになっています。

 

クサシギ

 

タカブシギ

 

 私が子供の頃によくシギやチドリを見ていた場所では、なかなかこの2種を近くで観察することができず、長らく識別に自信をもてずに悔しい思いをしていたある日、運良くクサシギとタカブシギの2種らしいシギが並んで舞い降りたことがありました。しかし、「どうせ僕には見分けられないんだから…」と真面目に観察せず、やや自分の目の焦点を合わせず眺めていたら、タカブシギの背中がクサシギに比べて白く見えてきたではありませんか!図鑑の記述と自分の目の前にいる鳥の特徴がピッタリと合ったことに興奮を抑えることが難しかったことを覚えています。

 この経験から、鳥の見分けのコツの一つに、自分が識別に悩んだ鳥を「じっくり見ない」という方法を試すことがあります。皆さんも、シギチドリの見分けで困った時は、ちょっと自分のピントをずらしてみて、その鳥が全体的に醸し出す雰囲気に注目してみると意外と自分らしい識別ポイントを見つけられるかもしれません。

まずはじっと


 近年、以前にも増してシギやチドリの仲間を観察したい、撮影したいという人が増えてきており、その際に鳥に近寄るコツをよく聞かれるのですが、「まず、じっとする」ことです。シギチドリに限らず、鳥を近くで見たければ、まずは動きを少なくすることは鉄則です。近くに鳥が来た時には双眼鏡やカメラを構える動きはゆっくり、例えば自分が動いたことで鳥が伏せてじっとしていたり、自分とは反対側へ動こうとしたら、自分もとにかく動きを止めることでその鳥を少しでも近くにいさせる時間を長くさせる可能性を高めることができます。

 毎年南半球から北半球まで飛び続ける長旅をするシギチドリたちですので、日本に滞在中に少しでも彼らがのんびりできるように、皆様の優しさを鳥に向けていただけたら、一人の鳥好きとして嬉しく思います。

 

佐賀県東よか干潟のシギチドリたち

 

 

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筆者紹介


神戸宇孝

野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール: 1973年石川県生まれ。
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる。CWニコル氏の環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて選ばれる。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

本サイトの掲載写真・イラスト・文章は許可のない転載、複製など固くお断りします。
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