第8回 離島・海岸で渡り鳥を観察するおもしろさ

第8回 離島・海岸で渡り鳥を観察するおもしろさ

第8回 離島・海岸で渡り鳥を観察するおもしろさ


 野鳥画家 神戸宇孝さんの新連載の第8回

 

はじめに


 バンガードのサイトを閲覧の皆さん、こんにちは。鳥類画家の神戸宇孝です。私は幼稚園の頃に野鳥観察に興味を持ちました。 長年、鳥に会うためにどのようにすれば良いか?を考えて生きてきたせいか、鳥の探し方や見分け方について質問をよく受けます。 慣れてしまえば実際には難しくはないのですが(ズボラな私でもできる!)、それがビギナーの皆さんにとって役立つ情報とのことで、2年間で8回の連載を通して、 環境別にバードウォッチングが上達する方法を紹介していきたいと思います。

 

よろしくお願いいたします。

 

春と秋に様々な野鳥にベストスポット


 鳥を見始めると、たくさんの種類の鳥に出会いたくなることもしばしばです。そんな時にお勧めなのが、鳥の渡りの最盛期である春や秋に離島や海岸緑地の訪問です。海に浮かぶ島や海岸緑地は、海上を渡る鳥たちの重要な中継地やこれから海へ飛び出して渡っていく鳥たちの出発点であり、海を越えてやってきた最初の到達場所になります。特に日本海側の離島が人気です。

 

離島の草地の斜面から見下ろす、干潮時の岩礁帯と青い海が広がる海岸風景

毎年、日本海に浮かぶ渡り鳥の中継地となる島には、春と秋に鳥たちを求めてたくさんのバードウォッチャーも“飛来”します。山形県飛島、山口県見島、石川県舳倉島、新潟県粟島などが有名です。

 

 日本へ夏鳥や冬鳥として飛来する鳥たちを間近で見ることができるのが魅力ですが、彼らは命をかけた壮大な渡りの途中で、海を越えて到着した小さな体はヘトヘトです。普段のバードウォッチング以上に、観察や撮影のために追いかけ回したり、無理に近づいたりすることは絶対にしないようにお願いします。皆さんが鳥に近づいた「その一歩」から逃げるためのエネルギーが、鳥にとっては致命的になることもあります。鳥に優しい観察を続けていれば、きっと鳥たちのほうから距離を縮めてくれる機会があると思います。

 

新緑の草地で小枝にとまるオオルリのオス

普段は高い木の上で鳴いている姿を見ることが多いオオルリも、低い枝に止まって見えることもよくあります。

 

落ち葉の上で採餌するコルリの姿

知人が「じっとしているほうが鳥を近くで見られるよ」と言うので、それを実践した直後にそばまで来たコルリ。

 

珍しい鳥に会えるチャンスが増す離島


 街中などの公園での野鳥観察ではまず会えないような鳥たちに出会うチャンスがあるのが、離島の醍醐味ですが、まずはどんな種の鳥がいるかを見て回りましょう。鳥たちの小さな気配を逃さないように、ゆっくりと静かに歩きながら、島の中を回ることがたくさんの鳥に出会うコツです。

 

雑木林の細い枝にとまるアオジ

まずは一般的な鳥がどのくらいいるかを見てまわって、“鳥の濃度”を調べましょう。例えば、アオジが多く見られればホオジロ類を探すセンサー(声や藪の中を動く鳥に注意する、など)を研ぎ澄ましてみましょう。

 

普段とは少し違う行動が見られることも


 渡りの時期は繁殖地とは少し違う行動が見られることもしばしばです。例えばキビタキなどのヒタキ類は樹上ではなく、頻繁に地面で採餌する姿が見られます。気温が低い日などは虫が飛び回っていないので地表付近で餌探しをしているのですが、渡りの途中でエネルギー消耗して弱っている個体の可能性もあるので、まずは様子を見て、むやみに近づかないようにしよう。

 

路肩の草むらのそばに降りたキビタキのメス

地面で採餌するキビタキの雌。山形県飛島で撮影。

 

草地で餌を探すカラアカハラ

大陸系のツグミ類の一種、カラアカハラ。本土では観察が難しい鳥で、夕方に見つけたツグミの群れの一番端の茂みにいるのを見つけました。

 

芝生の上で周囲をうかがうハチジョウツグミ

ハチジョウツグミ。早朝、最初に見たツグミの群れに混じっていました。

 

青空の下で電線に並んでとまるコムクドリの群れ

電線に集まっていたコムクドリ。島ではムクドリのほうが珍しいので、「ムクドリっぽい群れ」を見つけたときは、必ず双眼鏡でチェックしよう。

 

「どんな鳥も出会う可能性がある」と思って探すこと


 渡りの時期は、「これはいないでしょう」という概念を捨てることも重要です。ホシガラスという通常は標高2000m以上の高山に生息している鳥を、ウミネコというカモメの声を聴きながら見たこともありますし、繁殖地では太い樹のある神社などにいるアオバズクが細い木ばかりの茂みに潜んでいたこともあります。

こんもりとした木の葉陰で休むアオバズク

茂みに潜んでいたアオバズク。同行した人が見つけてくれました。

 

普段の鳥との違いをきちんと確認する


 街の中で見慣れているハクセキレイだと思っていると、実はそれは珍しい種だったということがあるのが、島ではよくあることです。以下の2枚はハクセキレイの大陸形亜種のホオジロハクセキレイとタイワンハクセキレイです。

水田の浅瀬を歩くハクセキレイ(ホオジロハクセキレイ)

ホオジロハクセキレイ。ハクセキレイと違って目の周りが白い。

 

刈り取られた田んぼで休むハクセキレイ(タイワンハクセキレイ)

タイワンハクセキレイ。夏羽でも背中が灰色で喉の黒い部分が嘴根元まで伸びている点がハクセキレイとの違い。

 亜種とは、生物分類における種より下位の区分で、生息域の違いなどで羽の色や模様が異なる個体群のことです。少々マニアックな野鳥観察となりますが、島に来ないと見られないことも多いので、ぜひ探してみると良いでしょう。

 

時間がない人にオススメ?海岸緑地で渡り鳥を探そう!


 島へ行っていろんな鳥を見たいけれど、時間がない…そんな人もいらっしゃるでしょう。私は子供の頃、島へ野鳥観察に行くお金がなく、親も休みが取れない状況でしたので、観察会などで大人の方々が島でのバードウォッチングの話題で楽しそうにしている様子を、指をくわえて聞くだけでした。しかし、そんな中で「こんな方法もあるよ」と別の方が教えてくださったのが、「海岸緑地での渡り鳥観察」です。

海岸林の遊歩道と、バードウォッチングに適した松林の風景

海岸林の公園の風景の例。潮風に耐えるクロマツが生えていることが多い。

 特に海岸線に沿って長い緑地が続く場所は鳥が移動に使っていることが多く、私は初めて訪れる場所でも海岸林の中に公園や遊歩道のある場所を調べて、環境のチェックをしています。全ての場所で渡り鳥に会えたわけではないですが、私は訪問した中で心が踊るようなたくさんの鳥に出会えた海岸林は以下の場所です。

新潟県 紫雲寺記念公園
石川県 健民海浜公園
静岡県 千本浜公園
福岡県 海の中道海浜公園
宮崎県 阿波岐原森林公園

海岸に沿って緑地がある環境は特に利用されていることが多く、その指標になるのがヒヨドリの群れです。

 

海岸林の上空を一斉に飛び回るヒヨドリの群れ

海岸林の上空を飛ぶヒヨドリの渡りの群れ。春や秋にこの群れが通過していれば、他の渡り鳥も利用している可能性が高くなります。

 島での観察に比べると珍しい鳥に出会う確率は下がる傾向にありますが、渡りという地球のドラマを観ることはできます。森の中や近くの畑や草地などで鳥が休息していることもよくあります。

 

青空の下を滑空するカケスのシルエット

上空を飛んでいくカケス。

 

新芽の伸びる低木にとまり採餌するアトリ

雨が降ったためか、緑地に立ち寄って採餌をするアトリ。

 

草地で散らばって採餌するツグミの小さな群れ

海岸林のそばにあるグランドに集まったツグミ。

 

八重桜のつぼみをついばむウソと青空のコントラスト

海岸の公園に植えられたサクラにやってきたウソ(亜種アカウソ)。

 

定点観察も楽しい!


  道東を訪問するバードウォッチャーの多くは、たくさんの鳥を見るために訪問時になるべく多くの場所を巡る計画を立てますが、私は2022年から3年間ほど北海道知床半島に10月上旬に1週間ほど滞在し、どんな渡り鳥が通過していくのかを定点を決めて調査しました。すると、目の前を1日3000羽近いカワラヒワの大群が通過していったり、オジロワシが海岸に沿って続々と移動していく様子を観察することができました。

曇り空の下、林の上空を群翔するカワラヒワの群れ
青空と薄い雲を背景に広がるカワラヒワの大きな群れ

私の目の前を通過していくカワラヒワの大群。「渡り」という大きな鳥の流れの中に自分の体があることに、とても幸せな気持ちになりました。

 

曇り空を悠々と旋回するオジロワシの成鳥3羽

半島に沿って南西方向に向かって飛んでいくオジロワシの一群。ピーク時には1日30羽以上が通過していきました。

公益財団法人 知床財団の方々によると、定点で野鳥観察したデータはほとんどなく、貴重な資料になるとのことで、正式に発表することを勧められたので、私の所属する日本野鳥の会神奈川支部の研究年報 BINOS(バイノス)へ投稿しました。

以下のリンク先で、ご興味ある方はぜひご覧ください。

神戸宇孝:知床半島における秋季鳥類の定点記録の試み

 

鳥との出会いは、いつでも、どこでも


 これまで8回にわたり、環境別の野鳥観察のコツをお伝えしてきました。私に野鳥観察の醍醐味を教えてくださった平塚市博物館 館長だった浜口哲一先生が、「鳥は鳥だけで生きているわけではないので、訪問した場所の周辺の自然環境の様子と会えた鳥の関係を覚えていくと、“こんな鳥に出会えるかもしれない”という予測ができるようになるよ」と、まだ小学生だった私に教えてくださり、それを実践してきたことで多くの鳥と出会うことができるようになり、それこそが野鳥観察の醍醐味と感じるようになりました。

バードウォッチングを楽しみたいという特に初心者の方々に、浜口先生から教わったバードウォッチングの醍醐味を伝える機会が最近は特に増えてきたように思います。ふと再会した時に「茂みの中にアオジがいそうだと思ってしばらく待ったら会えました!」という体験をお聞きすると、私の経験が少し役立ったようで、とても嬉しくなります。

いつでもどこでも、気軽にできるバードウォッチング。の連載が、身の回りの環境から出会えそうな鳥たちを皆さんが予測することに役に立ったら、私は嬉しいです。
では、また、いつか、どこかで。

2025年12月 神戸宇孝

 

 

 

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筆者紹介


神戸宇孝

野鳥画家 神戸宇孝(ごうど うたか)

プロフィール: 1973年石川県生まれ。
英国サンドーランド大学自然環境画学科卒。

5歳の時に野鳥観察に興味を持ち、野鳥画は小学生の時に動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる。CWニコル氏の環境管理について学び、2000年英国に留学、野鳥生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションに最優秀画家の一人に日本人としてはじめて選ばれる。野鳥の行動や環境と生き物のつながりを観察するのがモットー。

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